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論文記事:介護サービス事業所に勤務する看護職の高齢者虐待に関する実態調査結果 201701-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第1号 2017年1月

介護サービス事業所に勤務する
看護職の高齢者虐待に関する実態調査結果

永田 美奈加(ナガタ ミナカ) 鈴木 圭子(スズキ ケイコ)

目的 養介護施設従業者等による高齢者への虐待行為が問題となっている。虐待を防止するために,その実態を明らかにする必要があるが,介護サービス事業所の看護職を対象とした報告はみられない。本研究は,介護サービス事業所に勤務する看護職において,「自分の行為が虐待に該当すると思ったことがあるか」「虐待と思われる行為や不適切な行為をしそうになったことがあるか」という虐待の認識を明らかにすることで,高齢者虐待の背景と関連要因を明らかにすることを目的とした。

方法 A県介護サービス事業所529施設に勤務する看護職員を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,職場環境,高齢者虐待の認識「自分の行為が虐待に該当すると思った経験(虐待の可能性がある行為の経験)」「虐待と思われる行為や不適切な行為をしそうになった経験」等とした。虐待の可能性がある行為の経験および虐待と思われる行為や不適切な行為をしそうになった経験と各特性とのクロス集計,χ2検定を行った。その後,職場環境(職員間の連携,ケアプランの理解,虐待防止規制やマニュアル作成,高齢者虐待研修受講経験),個人特性(仕事継続意思,仕事以外の悩み)を独立変数,虐待の可能性がある行為の経験および虐待と思われる行為や不適切な行為をしそうになった経験を従属変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った。

結果 有効回答数は,297件(有効回答率56.1%)であった。対象者の約3割が自分の行為が虐待に該当すると回答し,その内容は,威圧的な言動等「心理的虐待」,身体拘束等「身体的虐待」に該当する可能性がある行為の順に多かった。背景として,多忙,精神的ゆとりのなさ,安全性を重視した日常的な抑制,認知症への対応の困難さ等が挙げられた。多重ロジスティック回帰分析では,虐待の可能性がある行為の経験において,虐待防止規制やマニュアル作成なし,仕事継続意思なし,高齢者虐待研修受講経験ありが有意となった。虐待と思われる行為や不適切な行為をしそうになった経験では,虐待防止規制やマニュアル作成なし,他職種との協力体制なし,虐待研修受講経験あり,仕事以外の悩みありが有意となった。

結論 高齢者虐待防止の対策として,職場での現任教育,勤務体制からみた問題点の明確化と改善,職場環境の整備等,職員の意欲や職業意識向上につながる働きかけの重要性が示唆された。

キーワード 介護サービス事業所,看護職,高齢者虐待,高齢者虐待防止の対策

 

 

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