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論文記事:社会保障の分野別にみた高福祉高負担への支持 201708-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第8号 2017年8月

社会保障の分野別にみた高福祉高負担への支持

-年金・高齢者医療・介護の比較-
武川 正吾(タケガワ ショウゴ) 角 能(カド ヨク)

目的 本研究は年金,高齢者医療,介護という社会保障の個別分野間の,高福祉高負担を支持する者の割合と構造の比較を行う。

方法 2013年1月に15~79歳の日本全国の1,200名を対象に実施された,第483回NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)の調査のデータの一部を用いた。この調査は,エリア,都市規模や性別,年代に関して日本の人口比に合致するように,住宅地図データベースから世帯を抽出して割り当てた個人に対して,調査員による個別訪問留置調査の手法を用いた。分析方法として,2項ロジスティック回帰分析の手法を用いた。社会保障全般,年金,高齢者医療,介護それぞれについての回答を2値変数にして,従属変数とした。独立変数としては,「性別」「学歴」「等価所得」「世帯類型」を用いた。また,主として高齢者を受給者とする社会保障制度に対する距離感が年齢によって異なることから,50歳以上と50歳未満にサンプルを分割して分析を行った。統計的な有意水準は5%とした。

結果 高福祉高負担支持の程度を比較すると,社会保障全般が最も高く,次に年金と介護の順番となり,高齢者医療が最も低かった。次に高福祉高負担支持の構造を分野別にみると,社会保障全般については,50歳以上,50歳未満ともに,学歴の高さが高福祉高負担支持の割合を有意に高めていた。3つの個別の社会保障制度については,50歳未満では,高福祉高負担支持に対して有意な効果が見られる独立変数はなかった。50歳以上では,3つの制度すべてにおいて,等価所得の高さが高福祉高負担支持を有意に高めていた。

結論 50歳未満と異なり,50歳以上の年齢階層では個別の社会保障に対する高福祉高負担の支持は,すべて等価所得によって影響を受けていた。社会保障の受給が現実の段階になってくると,個別の社会保障の財源である税金や社会保険料を負担する能力が相対的に高い高所得者が,財源,給付共に拡充を支持するようになった。今後は低所得者の財源負担が可能な制度設計が重要であろう。

キーワード 高福祉高負担,所得再分配,福祉意識,社会保障,高齢者福祉

 

 

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