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論文記事:高齢者における熱中症予防行動とシール型温度計配布の介入効果 202102-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第2号 2021年2月

高齢者における熱中症予防行動と
シール型温度計配布の介入効果

萱場(木村) 桃子(カヤバ モモコ) 近藤 正英(コンドウ マサヒデ) 本田 靖(ホンダ ヤスシ)

目的 高齢者における熱中症予防行動の実態を明らかにし,さらにシール型温度計の配布が高齢者の熱中症予防における意識や行動を変容させるか評価することを目的とした。

方法 2013年7月に埼玉県A市の住民基本台帳から無作為抽出した65歳以上の高齢者2,124名に郵送で質問票を送付し,2012年夏季の熱中症予防行動について尋ねた。介入群(1,018名)にはシール型温度計を同封した。9月に同様の質問票を送付し,2012年と2013年の熱中症予防行動の比較,また,シール型温度計配布による介入効果を検討した。

結果 有効回答数は989名(有効回答率46.6%)であった。対象者は65-84歳(平均年齢72.5±4.9歳)の男性433名(43.8%),女性556名(56.2%)であった。2012年と2013年の行動を比較すると,エアコン使用時間,エアコン使用開始温度,エアコン設定温度,室温測定で差が認められた。飲水行動については,「喉が渇かなくても時々/定期的に水をよく飲むようにした」との回答が95%以上を占めており,2012年と2013年に差は認められなかった。シール型温度計を配布した介入群では対照群に比べ,2013年のエアコン使用開始室温「暑いと感じたら」,エアコン設定温度「一定の設定温度で決めていない」との回答が少なかった。また,対照群(62.1%)に比べ,介入群では2013年に温度計を「よく見る」と回答した人が75.1%と多かった。

結論 高齢者の熱中症予防行動の実態が明らかになった。シール型温度計配布による介入は高齢者の室温に対する意識を変化させる可能性が示唆された。安価で大量に作成および配布することが可能であるため,大規模集団における熱中症予防に向けた啓発に一定の効果はあると考えられるが,介入群の25%は温度計をあまり見ていなかったという結果を踏まえると,シール型温度計の配布だけでは高齢者の熱中症予防対策としては不十分である。今後,高齢者の熱中症予防行動の変容につながる効果的な介入方法について,さらなる検討が必要である。

キーワード 高齢者,熱中症,シール型温度計,エアコン使用

 

 

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