勤労者の通勤時運動時間と

虚血性心疾患危険因子の関係

 

タカタ ヤスミツ

高田 康光

 

 

目的 勤労者の通勤時の歩行あるいは自転車利用時間(通勤時運動時間)と虚血性心疾患危険因子の高血圧、高脂血症、糖尿病の発症率との関連を明らかにする。

方法 同一職場に属し、1998年度定期健康診断時の血圧、血清コレステロール、血糖の項目で精密検査の対象とならなかった者で、慢性疾患で治療中の者を除いた男性429名、女性61名、平均年齢50歳の計490名を5年間観察した。検査基準では、収縮期血圧160mmHg未満、拡張期血圧100mmHg未満、空腹時血清コレステロール値260mg/dl未満、空腹時血糖値110mg/dl未満、空腹時血清中性脂肪値300mg/dl未満のすべてを満たした者を対象とした。観察期間中に治療開始あるいは基準値を2回以上超えた場合を発症とした。通勤時運動時間とその他の運動習慣の頻度、飲酒、喫煙習慣、睡眠時間等の生活習慣を自己記入式問診票により調査した。通勤時運動時間が20分未満(A群:279名)、20分以上40分未満(B群:163名)、40分以上(C群:48名)の3群で、疾病発症件数、前後の健康診断結果を比較した。

結果 期間中に治療開始となった対象者は、高血圧6名、高コレステロール血症2名で、糖尿病はいなかった。検査値から発病したと判定したものは、高血圧1名、高コレステロール血症4名、糖尿病8名、境界型高血糖48名だった。疾病の81%、境界型高血糖の71%がA群に属し、通勤時運動時間とこれら虚血性心疾患危険因子となる疾患の発症率に有意な関連を認めた。健康診断結果では、BMI、血圧、血糖、血清コレステロール、肝機能検査のAST、ALT、GGTの平均値には各群間で有意差は認めなかった。しかし、AST/ALT比、GGT、BMI値は、A、B群でのみ5年後に有意な上昇を認めた。

結論 通勤時運動時間が長い群ほど高血圧、高コレステロール血症、糖尿病の発症が5年間、有意に低率だった。その機序としては、通勤時の運動がGGTの上昇で疑われる脂肪肝発症を抑制していることが考えられた。

キーワード 通勤時運動時間、生活習慣病、運動習慣、高血圧、糖尿病、高脂血症