母親の定位家族体験と育児不安
−母親の育児ネットワークを視野に入れて−
ナカタニ ナ ツ コ
中谷 奈津子
目的 本研究では,乳幼児を持つ母親の定位家族体験の認知および現在の育児ネットワークと,育児不安との関連について検討した。
方法 三重県鳥羽市内全域の保育所16カ所,幼稚園1カ所に通う子どもを持つ770世帯の母親を対象とした。鳥羽市社会福祉事務所の協力を得て,2004年9月中旬から下旬にかけて,各保育所または幼稚園に調査票を配布し,回収した(委託留置調査法)。対象となった770世帯のうち431世帯の票を回収した(回収率56.0%)。そのうち無効票を除く421票を分析の対象とした。
結果 育児不安得点について因子分析を行ったところ,「生活疲労」因子,「育児不安」因子,「充実感欠如」因子の3つが抽出された。また母親の小学生の頃の定位家族体験12項目について対応分析を行い,因子軸第1軸〜3軸を抽出した。第1軸はきょうだいやおじ・おば等による厳格な養育⇔祖父母による受容的でモデル的な養育,第2軸は祖父母中心の養育⇔父母によるケアとモデル的な養育,第3軸は祖父によるケア中心の養育⇔祖母によるケアとモデル的な養育と表わされた。分析の結果「生活疲労」因子については,世話ネットワーク(リフレッシュ)を持つ母親ほど,生活疲労の因子得点が高く,母親の収入が200〜300万円未満の時にも生活疲労が高いことが分かった。「育児不安」因子については,助言ネットワーク,世話ネットワーク(自分の病気時)があるほど育児不安は低い傾向にあり,世話ネットワーク(リフレッシュ)が多いほど育児不安が高くなる傾向にあった。「充実感欠如」因子については,祖父によるケア中心の養育を受けてきた母親は,充実感欠如の得点が高く,祖母中心のケアとモデル的な養育を受けてきた母親は,その得点が低い傾向にあった。
結論 育児ネットワークが有効に働いていたのは,「育児不安」因子のみであり,「生活疲労」因子については,世話ネットワーク(リフレッシュ)が負の相関を示すのみであった。「充実感欠如」因子においては,育児ネットワークが有効な支援策として機能しておらず,むしろ母親の定位家族体験の認知に影響されていることが明らかとなった。
キーワード 定位家族体験,育児不安,育児ネットワーク,母親