「子育ての楽しみ」要因と少子化対策の可能性
−兵庫県を事例とした探索的分析から−
オチ ユウコ ムラカミ トシキ
越智 祐子 村上 寿来
目的 少子化対策が行ってきた,様々な育児負担の軽減を目的とした「育児支援」の背景には「子育て=負担」というとらえ方が存在している。しかし,そもそも子育てを負担としてとらえる価値観が少子化を押し進めているひとつの要因であるとすれば,負担軽減を狙う政策だけでは,少子化傾向に歯止めをかけるには大きな限界があると言わざるを得ない。したがって,そうしたとらえ方を超えた新たな視点を導入した政策展開が必要であると考えられる。それは「子育ての肯定的要素の増幅」という観点である。本稿では「子育ての楽しみ」に焦点をあて,質問紙調査からその構成要素を明らかにすることを試みた。
方法 兵庫県下の市町に対して1歳半健診対象者への調査票配布への協力を依頼し,協力が得られた市町で1歳半健診の対象となった児の母親を対象に,自記式調査票による質問紙調査を実施した。調査票は後日,同封の返信用封筒による個別回収を行った。調査の実施期間は2007年11〜12月であり,配布数は2,000票,有効回収数は532票で有効回答率は26.6%であった。
結果 妊娠・出産・子育ての楽しみに関する項目を作成し,因子分析を行ったところ,「子どもへの愛着」「変化への適応性」「自分の成長」「つながりの増加」「コントロール願望(不全)感」「身近なモデルの存在」の6因子が抽出された。「都市」と「地方」で因子得点の平均値を比較したところ,「コントロール願望(不全)感」が「地方」で有意に高いことがわかった。
結論 養育者の主観的な「子育ての楽しみ」を構成する要素を検討し,「子育ての楽しみの増幅」という少子化対策の新たな視点を提供した。既存の施策についても,新たな視点から再評価することが可能である。
キーワード 子育ての楽しみ,少子化対策,因子分析