シックハウス症候群と住まい方

−居住環境にかかわる疾病予防−

 

タナカ カヅコ キシ レイコ サイジョウ ヤスアキ ナカヤマ クニオ モリモト カネヒサ

田中 かづ子 岸 玲子 西條 泰明 中山 邦夫 森本 兼曩

タキガワ トモコ シバタ エイジ チカラ ヒサオ ヨシムラ タケスミ タナカ マサトシ

瀧川 智子 柴田 英治 力 寿雄 吉村 健清 田中 正敏

 

目的 現在,社会的に問題となっているシックハウス症候群(以下,SHS)の予防対策を居住環境や住まい方の面から検討するため全国6地域(札幌,福島,名古屋,大阪,岡山,北九州)の一般住宅を対象に居住者の自覚症状と室内環境,生活感覚との関係を調査した。

方法 築6年以内の一戸建て住宅の中から無作為に抽出した対象に自覚症状,住環境,生活感覚について質問票を配布し,425軒(1,479人)から回答を得た。SHSの判定には自覚症状の訴えが1つ以上あり,その症状は「家を離れるとよくなる」の回答群をSHSあり群とし,質問票調査と同時に測定した居間の化学物質,ダニアレルゲン,真菌,粉じんなどの測定値および質問票項目との間で関連を検討した。

結果 環境測定値では,ホルムアルデヒド,総アルデヒド類,総VOC類,総ダニアレルゲン,真菌総コロニー数がSHS群でSHSなし群より有意に高値であった。住環境,生活感覚に関する質問項目では「カビ発生あり」「水漏れあり」などの高湿度環境の指標となる項目,「床材がフローリングである」,居間で「シンナーを使用・保管した」など直接的関連項目や「家のにおいが気になる」「家の空気が悪い・汚れていると感じる」などの居住者の汚染感覚の指標となる項目がSHS群で有意な関連を示した。質問項目中,SHSのリスクとして示された住環境や生活感覚に関する項目を選択し,温度,湿度,室内粉じん量,微生物測定値などの住宅が具備する条件も加えて,SHS発症原因物質との関連について検討した結果,アルデヒド類濃度の増加には温度,湿度,真菌総コロニー数,粉じん量,汚染感覚指標数が,総VOC濃度では汚染感覚指標数,高湿度環境指標数が関連した。総ダニアレルゲン値の増加には粉じん量,湿度,高湿度環境指標数,汚染感覚指標数が,真菌総コロニー数では湿度,粉じん量が関連した。

結論 昨今の新築住宅では,建築基準法の改正や化学物質の室内濃度指針値の設定により,住居の換気・空調の向上や該当化学物質濃度の低減などSHS発症原因の除去対策が進められている。しかし,実生活上において化学物質や微生物などはSHS発症の独立の要因というより居住環境や居住者の住まい方が総合して影響しあっていることが示唆され,SHS対策には居住者・個人レベルでの湿気や清掃など居住環境に関する知識の蓄積,それらの実践も必要と考えられた。

キーワード シックハウス,化学物質,微生物,湿度,住居環境,住まい方