生命行政の検証
−岩手県旧沢内村(現西和賀町)の老人医療費無料化が村におよぼした影響−
スズキ ルリコ
鈴木 るり子
目的 岩手県旧沢内村(現西和賀町),(以下,「沢内村」)の生命行政,特に老人医療費無料化が村におよぼした影響について検証する。
方法 聞き取り並びに文献による。
結果および考察 岩手県沢内村の生命行政は,沢内村出身の深沢晟雄によって実践された。深澤晟雄は,昭和29年教育長,昭和31年助役,昭和32年村長に就任し,豪雪・貧困・多病と闘い,昭和35年12月から65歳以上,翌年4月から60歳以上と乳児の医療費無料化を全国で初めて実施した。また,沢内村の豪雪に対しては,ブルドーザーでの除雪で人々の諦め意識の改革,高い生活保護率に対しては,貧困と疾病の悪循環を断ち切るため保健師を採用し,本格的な保健活動を展開した。昭和37年には日本で初めて乳児死亡ゼロを達成し,昭和38年に保健文化賞を授与されている。深澤村長は,さらに健康管理課を設置した。課長は医師とし,保健・医療の沢内方式の予防活動を展開し,地域包括医療のシステ化を図った。老人医療費無料化が村に与えた影響は@長寿村の達成−昭和55年には,近隣のどの町村よりも長寿の村となった。A国民健康保険の医療費の減少−被保険者1人当たりの医療費は,昭和43年には県平均を下回った。B健康な村づくりに発展−60歳以上の医療費無料化が果たした役割について,元沢内村病院長増田進は,「村が明るくなった。老人の自殺が減少した。嫁の受診が増え,家族の健康に気配りができるようになった」と述べている。このように沢内村が行った老人医療費の無料化は,高齢者を明るく元気にし,全村民の健康づくりに波及した生命行政であった。健康が保障されれば,住民の関心とエネルギーは次の段階へ向けられる。村の高齢者達が生き生きと活動する姿はいかに生命や健康の基盤を支えることが重要かを示唆している。
キーワード 生命行政,老人・乳児医療費無料化,沢内方式,地域包括医療