児童養護問題の階層性
−児童養護施設6カ所の実態調査から−
ホリバ ジュンヤ
堀場 純矢
目的 児童養護施設(以下,施設)で暮らす子どもと親の生活問題に関する研究は,1990年代以降,ほとんどみうけられない。そこで筆者は,子どもと親(家族)の背負う労働問題を生活問題と不可分のものとして捉え,東海地区の施設6カ所で暮らす子どもと親の生活問題に関する調査を行った。本稿の目的は,この調査結果をもとに,児童養護問題の階層性を統計的に浮き彫りにすることである。
対象・方法 調査対象は,東海地区の施設6カ所の父母352名(父179名,母173名)とした。A園(2000年3月),B園(2003年4月),C園(2006年8月),D園(2006年10月),E園(2006年3月),F園(2008年8月),すべてその月現在の各施設に在籍している子どもと親の生活歴についてケース記録より情報抽出を行った。また,施設職員にケースごとに情報が不足する項目について聞き取りを行った。調査期間は,2000年8月,2003年5月〜2004年8月,2006年1月〜2008年8月である。調査項目は,学歴,就労・所得,社会保険,居住場所,近所づきあいの程度,健康状態の6項目とした。
結果 施設で暮らす子どもの親は,親の親(祖父母)の代からの貧困を背景として,「学歴」が低く,そのことが「不安定就労」「無職」「生活保護」につながっていた。その結果,住居も相対的に狭小な民間アパート・寮・公営住宅で暮らさざるをえず,自己負担の割合が高く給付が不十分な「国保」「無保険」につながっていた。さらに,雇用・労働条件が不安定で重労働のため,「近所づきあい」をするゆとりもなく社会的に孤立し結果として心身の健康問題が深刻化していた。
結論 施設で暮らす子どもと親のほとんどが不安定低所得階層であること,母親に不安定就労や無職が多く,生活問題が深刻であること,父母ともに厳しい労働・生活実態を反映して,心身の健康問題が深刻であること,児童養護問題の背景には親の労働・生活問題があること,以上の4点が明らかとなった。
キーワード 児童養護施設,階層性,健康・生活問題