介護老人福祉施設におけるケアの質の確保と施設の組織・管理

 

イシグロ アヤコ

石黒 文子

 

目的 高齢者に対するケアの質は,提供する介護職員の質に依存することが多く,一人の利用者に対して多くの介護職員が関わる施設介護の現場において,質の高いケアを提供していくためには,組織的な取り組みが必要である。そこで,介護職員と組織との良好な関係が,結果的にケアの質の維持・向上につながるものと仮定し,介護職員の仕事と組織・管理に関する認識の現状を探索的に分析し,施設において優先的に取り組むべき組織の課題を明らかにすることを目的とした。

方法 2007年9月に,ケアの質の向上に組織的に取り組む3カ所の介護老人福祉施設の介護職員を対象とした留め置きによる自記式回答法調査を実施した。調査項目は,基本属性のほかに,組織コミットメント,仕事や職場の組織・管理の現状,職務満足度を中心に構成した。

結果 組織コミットメントを因子分析した結果抽出された第1因子「残留・意欲」および第2因子「情緒的コミットメント」の因子得点と,個人属性,仕事や職場の現状に対する認識,職務満足度との関連について,相関係数の算出,一元配置分散分析,重回帰分析を行った結果,職務や教育体制の現状に対して肯定的に捉えている職員,賃金に対して満足している職員ほど「残留・意欲」と「情緒的コミットメント」がともに高かった。また,上司・リーダーや同僚との関係の現状に対して肯定的に捉えている職員ほど「情緒的コミットメント」が高い傾向にあった。さらに,組織コミットメントについて,離職率の高い施設と低い施設の介護職員に差がみられた。

結論 結果から,ケアの質の向上のために優先的に取り組むべき組織的な課題として,3点があげられる。第1に,仕事に対して達成感が感じられる仕組みや自分の能力を活かすことができる体制を構築していくこと,第2に,労働に見合った賃金のあり方を検討し,施設に見合った人事評価制度のあり方を確立していくこと,第3には,職員の意見を反映した教育・研修を行っていくことである。また,離職が介護施設を揺るがす大きな課題となっている中で,離職率による差がみられた組織コミットメントは,組織を管理していく上での有効な1つの指標となる可能性が示唆された。

キーワード ケアの質,介護職員,組織コミットメント,離職