米国におけるブタ(swine)インフルエンザ集団発生(1976年)から全国予防接種キャンペーン開始までの経緯

 

タケチ マリア コバヤシ マサユキ コンドウ キョウコ オオフジ サトコ

武知 茉莉亜 小林 真之 近藤 亨子 大藤 さとこ

フクシマ ワカバ マエダ アキコ ヒロタ ヨシオ

福島 若葉 前田 章子 廣田 良夫

 

目的 1976年2月にFort Dix米陸軍基地で認められたブタ(swine)インフルエンザの集団発生から,同年10月の全国インフルエンザ予防接種キャンペーン(National Influenza Immunization Program: NIIP)開始までの一連の流れを要約し,新型インフルエンザ対策の参考に資する。

方法 Fort Dixにおけるswineインフルエンザの集団発生,NIIP決定までの経緯,およびワクチンのfield trialに関する文献から得た情報を時系列に記す。

結果 Fort Dixswineインフルエンザ集団発生以後,米国の内外で新たな集団事例が確認されなかったにもかかわらず,swineインフルエンザの流行が起こるという前提のもと,NIIPの実施が決定された。計画当初では,接種対象の優先順位は決められておらず,全国民に対して1回の予防接種が妥当であるという予測のもと,2億人分のワクチンを製造することが決定された。また,採択されたNIIPの計画案では,swineインフルエンザ流行が再来しない,という場合については想定されていなかった。NIIPで使用する予定のワクチンに関してfield trialが行われ,様々な年齢層を対象に,2社のsplitワクチンおよび他2社のwholeワクチンが抗原量別に評価された。その結果を踏まえ,免疫原性と安全性が確認されたワクチンにつき,用量・接種回数を規定したうえで接種が勧告された。しかし,NIIP開始までにすべてのfield trialは完了せず,開始前の接種勧告発表に至らなかった年齢層もみられた。また,全国民に予防接種を行うことを予定していたにもかかわらず,ワクチンの必要供給量は確保できていなかった。ワクチン接種開始後,接種者におけるギラン・バレ−症候群の発生が報告され,NIIPは中止となった。

結論 1976年のswineインフルエンザ事例から,流行の可能性はもとよりワクチン製造といった人為的なことを含め,あらゆる点において予測は覆されうるという前提に立って対策を検討する必要性が示唆された。予防接種キャンペーンを計画する際は,そのような前提を考慮したうえで,計画の社会的意義を国民に周知させることが重要と考えられる。

キーワード swineインフルエンザ,予防接種計画,ワクチン製造