利用者主体の福祉サービスの実践条件に対する職員と利用者の認識

 

ワタナベ ノブヒロ モリヤマ テツミ

渡邉 修宏 森山 哲美

 

目的 本研究の目的は,福祉サービスの実践条件に対する職員と利用者双方の認識を比較し,利用者主体の福祉サービスの実践に必要な条件を明らかにすることである。

方法 調査対象はA県内の障害者支援施設14カ所(身体障害者療護施設)の職員451名(回収率74.1%)と利用者228名(回収率67.1%)であり,留置法か直接聞き取りのどちらかによる悉皆調査を2005年6月から同年9月までの期間に実施した。利用者主体の福祉サービスの実践条件に対する職員と利用者の認識を把握するため,「より良い福祉サービスが実践されるために何が重視されるべきか」「職員と利用者のかかわりをよくするために何が重視されるべきか」「職員と利用者のかかわりがよいほど福祉サービスはよくなるか」「現在,利用している施設の職員と利用者のかかわりはよいか」という質問を用いて回答を求めた。

結果 利用者主体の福祉サービスに対する職員と利用者の認識の間でいくつかの違いがみられたが,本質的に異なるものではなかった。違いは,利用者主体の福祉サービスを実践するための両者の視点の方向性の違いであった。すなわち,職員は福祉サービスを実践するための外的要因を重視したが,利用者は自分に向けられる福祉サービスの内容そのものを重視した。職員と利用者の認識を比較して明らかになった利用者主体の福祉サービスに必要な条件は,@ケアにかかわる人々の関係を良好にするための知識と技術を職員が習得すること,A利用者へのサービス量を拡充するための施設内設備の充実や外部関係機関との連携が強化されること,B利用者の要求に見合った,施設と家族の連携,施設と地域社会の交流が促進されること,C職員と利用者が,互いに話し合うことができ,相手を理解して共感的に対応できるような環境が設定されること,D利用者の話に耳を傾け,利用者のニーズを理解して共感的に対応できるケアの技術を職員が習得することの5つであった。

結論 本研究で明らかになった5つの条件を満たす福祉サービスが実践される必要がある。そのために,利用者と職員がかかわる場面と,そのときの彼らの行動の関係を調べ,どのような行動上の問題があるのか具体的に調べる必要がある。そして,その問題が解決されるなら,真の意味での利用者主体の福祉サービスの実践は可能となるだろう。

キーワード 利用者主体の福祉サービス,実践条件,職員と利用者の認識