大阪府におけるがん患者受療動態および地域別生存率の検討
シキ ナオミ オオノ ユウコ イトウ ユリ ツクマ ヒデアキ
志岐 直美 大野 ゆう子 伊藤 ゆり 津熊 秀明
目的 大阪府を対象にがん患者の治療時における受療動態および地域別生存率を検討した。
方法 対象は1993年から2002年の間にがんと診断され,大阪府がん登録に登録された患者のうち,主要5部位(胃,大腸,肝臓,肺,乳房)のがん患者を対象とした。がん診断年を前期(1993〜1997年)と後期(1998〜2002年)に分け,それぞれについて各2次医療圏間の患者移動状況を整理し,2次医療圏を単位とした患者の流出割合を部位ごとに算出した。特に,がん診断時の患者居住地と,治療を受けた医療機関の所在地(施設所在地)が同一の患者の割合を完結割合として算出した。さらに前期に診断された患者については,進行度,年齢構成の影響を調整した5年生存率を施設所在地別,患者居住地別に算出し,地域間の生存率格差について検討した。
結果 完結割合は地域によって異なり,前期では87.8%(大阪市)から40.3%(中河内),後期では90.2%(大阪市)から38.2%(中河内)の違いがあった(5部位計)。同一地域でも部位によって完結割合は異なり,特に肝がん,肺がんで低い傾向がみられた。前期から後期にかけて,大腸がんや乳がんでは完結割合が増加する地域がみられた。各地域に居住する患者の主な流出先は大阪市など治療において拠点となるような医療機関が集中する医療圏であり,当該地域の医療提供体制が患者受療動態に影響していると考えられた。施設所在地別の生存率では,年齢,進行度を調整した後も地域間格差がみられ,特に肝がんで11.0%,肺がんで13.4%と大きかった。一方,患者居住地別では生存率の地域間格差はどの部位においても3〜5%前後と小さくなっていた。患者の医療圏間の移動によって,生存率の地域間格差が小さくなっている可能性が示唆された。
結論 現在,2次医療圏ごとに医療提供体制が整備されてはいるが,医療圏によって治療成績は異なり,また,部位によって受療動態は異なっていた。医療圏間の施設連携など,患者受療動態を踏まえた医療提供体制整備が望まれる。
キーワード がん患者,受療動態,地域別生存率,大阪府がん登録(856words)