介護保険制度下における在宅療養者の生命予後に関連する要因
クラサワ タカシ
倉澤 高志
目的 介護保険制度が定着した現在の状況における,在宅療養患者の生命予後に影響する要因を検討し,改善するための課題を明らかにすることとした。
方法 大阪府保険医協会の内科系会員を対象に,2007年3月末日時点で継続的に訪問診療を行っている患者に対し1年間の追跡調査の説明を行い同意を得た349名(男性35.5%)につき死亡を主転帰指標として1年間追跡した。ベースラインでの患者情報の中で自立度,認知度,栄養状態については介護保険主治医の意見書に準拠して評価した。生死を従属変数,性別と年齢に加えて自立度,認知度,栄養状態,自己負担金の有無,点滴管理,介護保険サービスの利用有無を独立変数としたコックス回帰分析を行った。
結果 疾患別の生命予後の検討では悪性腫瘍のある者が有意に予後不良であることは明らかであった(p=0.017)。そこで,悪性腫瘍のある者を除外してコックス回帰分析を行った。生命予後に影響する要因として単変量解析では栄養状態不良に加えて自立度や年齢も有意な要因であったが,多変量解析では栄養状態不良のみが有意(p<0.01)な要因として抽出された。そのハザード比は6.89(95%信頼区間2.27−20.92)であった。次に介護認定を受けている者に限定して,栄養状態に影響する介護保険サービスの種類を検討した。訪問診療,訪問看護,通所サービス(通所介護,通所リハビリ)についてはサービス利用の有無と栄養状態不良者の割合とで関連はなかったが,訪問介護についてはサービスを利用者で栄養状態不良者の割合が有意に低かった(女性のみ,p<0.05)。
結語 医療介護全般を考慮した解析では,在宅療養中の患者の生命予後に最も影響するのは栄養状態であった。栄養状態を維持するためには訪問介護の利用が必要であるが,自己負担金のために利用率が下がっている事については何らかの救済策が必要である。
キーワード 在宅療養,生命予後,コックス回帰分析,栄養状態,訪問介護