保健所保健師に求められる筋萎縮性側索硬化症患者への支援のあり方に関する研究
―保健師による支援の現状と課題,今後の展望に関する−考察―
ヨシイ ジュンコ マツダ ノブコ
吉井 絢子 松田 宣子
目的 わが国の難病対策において,保健所は在宅で療養する難病患者の医療の確保や療養支援等を行っている。その中でも,筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)患者への支援の充実が求められていることから,保健師によるALS患者への支援の現状を明らかにし,今後の支援のあり方を検討した。
方法 近畿,中国,四国地方の保健所280施設に勤務する難病事業主担当保健師280人を対象に郵送による自記式アンケート調査を実施し,回答が有効であった123人(有効回答率43.9%)を分析対象とした。調査項目は,保健所の背景,保健師の特性,ALS患者のQOLを高める保健師の支援内容,支援困難なALS患者の状況等の6項目である。概念枠組みから,患者のQOLを高める支援を,精神的な支援,コミュニケーション手段の確保,同疾患患者との出会いの場の提供,外出の機会の確保への支援とし,それらの支援の実施と,保健師の経験年数,在宅療養中のALS患者支援数との関連について統計的検討を加えた。
結果 保健所の難病事業主担当保健師は,保健師としての経験年数の長短に関わらず,気管切開による人工呼吸器を装着しているALS患者の支援経験が少なかった。保健師が支援困難と感じているALS患者と初めて関わった時期は,確定診断後1カ月以内が最も多く,介護者の休息を目的としたレスパイト入院病床の確保や専門医の確保等が困難と感じていた。QOLを高める支援のうち,精神的な支援,コミュニケーション手段の確保,外出の機会の確保は,在宅療養中のALS患者支援数の多い保健師の方が少ない保健師よりも有意に多く行っており,また,保健師の経験年数に対して在宅療養中のALS患者支援数の多い保健師は,少ない保健師よりも有意に多くQOLを高める支援を実施していた。
結論 保健師はALS患者の発病初期から療養生活支援に関わっており,患者・家族の疾病受容や円滑なサービス導入のための支援に大きな役割を果たすことが示唆された。また,ALS患者のQOLを高める支援をより多く行うためには,保健師の経験だけではなく,実際にALS患者を支援する経験を積み重ねる必要があることが明らかになった。しかし,実際にはALS患者の支援経験が少ないため,今後はALS患者の支援経験を保健師が積み重ねることのできる体制の構築が必要である。
キーワード 保健所保健師,難病対策,患者支援,在宅療養,QOL