睡眠医療専門機関受診者における睡眠呼吸障害と交通事故との関連
サクライ ススム オオヒラ テツヤ マエダ ヒトシ ツダ トオル
櫻井 進 大平 哲也 前田 均 津田 徹
ナルイ コウジ ヨシダ リョウコ タニガワ タケシ
成井 浩司 吉田 良子 谷川 武
目的 睡眠呼吸障害(SDB)は循環器系疾患の危険因子であるばかりでなく,睡眠の量・質の低下による日中の眠気・集中力低下,それに起因すると考えられる高い自動車事故率,労働災害率が示されており,職業運転者の居眠り運転を含め社会的な問題になりつつある。本研究では,主に運転業務中の居眠りおよび交通事故等の頻度を調べ,体格指数(BMI),SDBの程度等との関連を検討した。
方法 睡眠医療専門機関にSDBを主訴に受診した者を対象とし,文書によるインフォームドコンセントのもとに質問紙調査を行い,398名を最終対象者とした。Epworth Sleepiness Scale(ESS),および終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査を実施し,覚醒指数(ARI),および無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出した。一部の対象者には,持続陽圧換気療法(CPAP)による症状の改善状況を調査した。さらに,重大事故群,重大事故予備群,居眠り群,眠気群,眠気なし群に分類し各医療機関別の頻度,職種,および業務と眠気・事故の頻度との関連を検討した。
結果 対象者の半数以上で,業務中に「頻繁に」または「ときどき」眠気を感じていた。運転中に居眠りをした人は約35%,居眠りによる事故経験者は約15%であった。運送業務・営業職において運転中の事故率が高い傾向がみられた。交代制勤務者で業務中に眠気を頻繁に感じる者は通常勤務者の約2倍であった。AHI値で3区分した場合,交代制勤務者はどの区分においても通常勤務者より,頻繁な眠気を訴える割合が多かった。通常勤務者ではAHIが高くなるにしたがって,業務中の眠気を訴える頻度が多くなったが,交代制勤務者では業務中,運転中にかかわらずAHIと眠気との関連はみられなかった。肥満,重度無呼吸および日中の眠気が強い,をすべて満足する群とひとつもあてはまらない群を比較したところ,重大事故発生比は11.4倍であった。運転業務従事者の中では,BMI値が大きいほど,また,ESSスコアが高いほど重大事故を起こす危険性が高くなっていた。CPAP治療実施中で回答があった方の約6割は治療の効果を実感していた。
結論 SDBを主訴に受診した対象者の多くが業務中の眠気を感じ居眠り事故率も高く対策が求められる。肥満防止・睡眠呼吸障害治療が重大交通事故発生減少に効果があることが示唆された。
キーワード 睡眠時無呼吸症候群,睡眠呼吸障害,パルスオキシメトリ法,スクリーニング検査,交通事故,産業災害