日本の社会的養護施設入所児童における被虐待経験の実態
ツツイ タカコ
筒井 孝子
目的 国内の先行研究において,これまで社会的養護関連施設別や,個々の児童の基本属性別にみた被虐待経験割合,あるいは複数の被虐待経験の組み合わせについての詳細は,全国レベルではほとんど明らかにされてこなかった。そこで本研究では,2009年に実施された全国の社会的養護関連施設の全入所児童のデータを用いて,第1に,わが国の全社会的養護関連施設の全入所児童における被虐待経験の割合を明らかにすること,第2に,被虐待経験の組み合わせを類型化し,その発生割合を明らかにすること,第3に,児童の被虐待経験と基本属性との関連を明らかにすることを目的とした。
方法 2009年度に社会的養護関連施設を対象とした調査で収集された全入所児童36,234名のデータを用いて,児童の年齢,性別等の基本属性,被虐待経験の有無と虐待の種類(身体的虐待,性的虐待,ネグレクト,心理的虐待,その他)について分析した。
結果 日本の社会的養護施設入所児童における被虐待経験ありの割合は,55.5%であった。男女別にみると男女ともに約6割と過半数を超え,年齢階級別では,虐待経験ありの割合が過半数だったのは,7歳以上16歳未満,16歳以上であった。また被虐待経験ありの割合は,施設種別によって大きく異なっており,情緒障害児短期治療施設が最も高く78.1%,児童自立支援施設が66.2%,児童養護施設では59.2%,母子生活支援施設が43.7%,乳児院34.4%であった。この結果からは,社会的養護入所施設のうち,乳児院と母子生活支援施設を除けば,被虐待経験を持つ児童は半数を超えており,社会的養護入所施設は,単に養育に欠ける児童へのケアだけでなく,被虐待児童に対して,治療的なケアも担うべき存在となっているものと考えられた。
結論 本研究では,施設種別ごとの被虐待経験の分析結果より,入所児童の属性が大きく異なっていることが示されたと同時に,被虐待児童への治療的ケアを含めた適切に提供できることが求められていることが明らかにされた。今後は,臨床現場で実施されている被虐待経験に対応するためのケアを明確にし,これを標準化していくことが課題である。
キーワード 社会的養護,被虐待経験,施設養護,要保護児童