第56巻第5号 2009年5月 介護福祉実習における養成校の課題-養成校教員と施設指導者の実習に関する調査結果から-津田 理恵子(ツダ リエコ) |
目的 介護福祉実習は,介護福祉士養成課程において価値観形成に重要な意義がある。しかし,介護福祉士養成施設による実習指導の実状において差があることが推察された。そこで,実習施設の実習指導担当者と介護福祉士養成施設の実習指導担当教員に,厚生労働省通達の指導要領に沿った指導が展開されているか調査を行い,実習における介護福祉士養成施設における課題について検討することを目的とした。
方法 調査は,質問紙を用いた郵送法で行った。対象は,介護福祉士養成施設協会に加入している全国の大学,短期大学および専門学校1~4年課程の介護福祉士養成施設で,巡回指導に当たっている介護福祉士養成施設の実習指導担当教員200人と,各都道府県の指定介護老人福祉施設4~5施設を無作為に抽出し,施設で実習指導に当たっている実習指導担当者200人である。研究の趣旨,調査の目的と内容を紙面により説明し,倫理的に配慮したうえで回答を得た。介護福祉士養成施設の実習指導体制と実習指導の実状,施設の実習指導担当者が意識している介護福祉士養成施設の実習指導体制などについて調査し,介護福祉士養成施設の実習指導担当教員と施設の実習指導担当者の,実習に関する意識や実状について検討した。
結果 質問紙の有効回答割合は,実習指導担当教員が82人(41%)で,実習指導担当者が80人(40%)であった。その回答から,学内演習の進度は,実習時期を決める際に考慮されていないことや,実習日数を十分に確保し,前向きに教育に取り組む姿勢が伺える養成校が存在している一方で,最低基準を満たしていない介護福祉士養成施設もあり,その差は歴然としていた。さらに,実習担当教員が行う巡回指導は,厚生労働省の通達によると,少なくとも週に2回は実施することが望ましいとされている中で,施設への巡回指導回数が,週に1回以下という介護福祉士養成施設もあり,介護福祉士養成課程における実習指導場面において,介護福祉士養成施設によって,厚生労働省から示されている指導要領を熟知せずに,実習指導に当たっている現状や,施設との連携も不足している結果が示された。
結論 介護福祉士養成施設の実習指導担当教員は,厚生労働省から示されている指導要領を熟知したうえで実習指導に当たると共に,施設との連携を強化し,介護福祉士養成施設の実習指導体制の整備をすすめ,実習カリキュラムを見直していくことで,学生にとって学びやすい実習環境の提供につながると提案した。
キーワード 介護福祉実習,実習指導体制,実習指導要領,実習日数,巡回指導