メニュー

論文記事:補完代替医療の利用における心理社会的要因の影響 201106-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第58巻第6号 2011年6月

補完代替医療の利用における心理社会的要因の影響

三澤 仁平(ミサワ ジンペイ)

目的 補完代替医療(以下,CAM)の利用について調査し,心理社会的要因を考慮に入れて,CAMの利用における関連要因のメカニズムを明らかにすることを目的に検討した。

方法 無作為抽出された仙台市に居住する20歳から69歳までの男女1,500名を対象に郵送調査を行った「健康と暮らしに関する意識調査」データを用いた(調査期間:2009年5月~7月)。過去1カ月間のCAM利用の有無を応答変数として,個人属性や健康関連QOL(SF-8),心理社会的要因(健康不安,将来における経済不安)を投入して,一般化線形モデルを用いて解析した。

結果 CAMを利用したことのある対象者は,全体の60.9%であった。個人属性のみを投入したモデルでは,性別(女性)(オッズ比=1.50[95%信頼区間:1.06-2.13]),年齢(40歳代)(OR=1.76[95%CI:1.02-3.05])が,CAM利用と有意に関連した。つぎに,健康関連QOL(SF-8)を追加したモデルでは,世帯収入(中位)(OR=1.54[95%CI:1.03-2.31])に有意なCAM利用との関連が認められた。SF-8の日常役割機能(RP)(OR=2.07[95%CI:1.31-3.31]),体の痛み(BP)(OR=1.46[95%CI:1.06-2.02])が有意な正の関連,身体機能(PF)(OR=0.62[95%CI:0.39-0.97])が有意な負の関連を示した。心理社会的要因を投入したモデルでは,健康不安(OR=1.66[95%CI:1.19-2.32])が有意にCAMの利用と関連していたが,将来における経済不安(OR=0.85[95%CI:0.55-1.29])は関連が認められなかった。また,年齢(40歳代)の関連が消失した。

結論 CAM利用の予測因子として性別は大きな要素であると考えられる。身体に関する軽度な健康問題を抱えていることはCAMの利用に関連するものの,あまりに健康状態がよくない場合にはCAMの利用へはつながらないと思われる。年齢(40歳代)は,健康不安を介して,CAM利用の有無に関連していると考えられる。このことは,年齢が中年期であることがCAMの利用につながるという直接的な関係があるのではなく,中年期の人は健康に関する不安を覚えやすく,そのことによってCAMを利用するという間接的な心理社会的なメカニズムが働いているのではないかと思われる。健康社会を目指すほど,健康不安が増長される可能性が指摘されているため,現代社会の健康づくりのあり方を検討することや,CAMに関するエビデンスを構築し,適切に報じることが求められる。

キーワード 補完代替医療,CAM,心理社会的要因,健康不安,将来における経済不安,SF-8

 

論文