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論文記事:介護予防施策の対象者が健診を受診しない背景要因 200903-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第56巻第3号 2009年3月

介護予防施策の対象者が健診を受診しない背景要因

-社会経済的因子に着目して-
平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 平井 寛(ヒライ ヒロシ)

目的 介護予防の特定高齢者施策では,65歳以上の高齢者の5%相当を事業の参加者と見込んでいたが,実際の参加者は0.14%と少なく,事業の見直しが求められている。そこで,特定高齢者に該当するような虚弱高齢者の特徴,スクリーニングの場とされている健診を受診しないことと関連する因子,健診以外のスクリーニング方法の可能性について検討した。
方法 9自治体に居住する要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象とした。特定高齢者施策の対象者選定で用いられる基本チェックリストに類似した項目を含む自記式調査票を郵送で配布回収した。分析対象は,39,765名(回収率60.8%)で,性別,年齢,治療の有無,通院頻度,主観的健康感,飲酒,喫煙,老研式活動能力指標,GDS(高齢者うつ尺度)15項目版,健診受診の有無,所得,教育年数,気兼ねなく外出できる場所の項目を用いた。
結果 「特定高齢者」には,28.2%が該当した。年齢が高く,女性で,医療機関での治療や通院をし,毎日3合以上飲酒や喫煙をしており,活動能力が低く,主観的健康感が悪くうつ傾向・うつ状態で,社会経済的階層が低い者が多かった。なかでも,主観的健康感のよくない者で65.2%ととてもよい者(10.2%)の6倍,等価所得300万円以上で21.1%に対し,50万円未満では35.9%と1.7倍も多くみられた。健診未受診者は,年齢が高く,医療機関での治療や通院をしておらず,飲酒や喫煙をしており,活動能力が低く,主観的健康感やGDSが悪く,社会経済的階層が低い者が多かった。今回の調査で把握できた「特定高齢者」のうち46.1%は健診未受診者であった。健診以外のスクリーニングの場をさぐるために高齢者が気兼ねなくいける外出先をみたところ,公共施設や仕事場は少なく,自宅周辺,病院・診療所が多かった。
結論 健診には元気な人ほど来ており,介護予防事業の対象となる「特定高齢者」の半数は受診していなかった。健診を介してスクリーニングする方法にだけ頼るのには限界があると思われる。医療機関や郵送アンケートの活用,社会経済的な地位が低い人に虚弱な高齢者が多いことに着目したアプローチなどを考えるべきであろう。
キーワード 介護予防,特定高齢者,虚弱高齢者,健診,社会経済的因子

 

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