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論文記事:3歳児歯科健診からみたう蝕の地域格差について 201803-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第65巻第3号 2018年3月

3歳児歯科健診からみたう蝕の地域格差について

藤山 友紀(フジヤマ ユキ) 田代 敦志(タシロ アツシ)

目的 3歳児におけるう蝕の地域格差について,地理情報システム(GIS)を用いて国勢調査の小地域統計データを活用した分析を行い,背景にある個人要因と環境要因を可視化し,う蝕との関係を明らかにすることを目的とした。

方法 新潟市A区における平成23年度の3歳児の歯科健診受診者613人を対象に,「う蝕の有無」を目的変数,「性別」「おやつの回数」「甘味飲料摂取の有無」「歯磨剤使用の有無」「フッ化物歯面塗布の有無」を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。次に同区の平成21~23年度の健診受診者1,835名を対象に,う蝕を有する者の割合と統計解析で有意な影響を認めた個人要因の分布状況をGIS上で可視化し,両者の関連について地理空間上で比較を行った。さらに,環境要因として,居住地の「人口密度」「産業別人口比率」「歯科医院から居住地までの直線距離」および「地域住民の学歴割合」を取り上げ,小地域統計データを用いてう蝕有病率との関係を分析した。

結果 ロジスティック回帰分析の結果,甘味飲料摂取の有無とフッ化物歯面塗布の有無にう蝕との関連が認められ,それぞれのオッズ比は1.66(95%信頼区間(CI)1.08-2.56),0.55(95%CI 0.35-0.88)であった。GISを用いた可視化により,行政区域に関わらないう蝕の有病状況と個人要因の分布が捉えられた。環境要因との比較において,人口密度では密集地区と過疎地区に比較して中間地区でう蝕有病率が低い傾向が認められ,産業人口比率では2次産業の割合が30%以下の地域でう触有病率の低い傾向が認められ,歯科医院から居住地までの直線距離についても,距離に依存してう触有病率が高くなる傾向にあったが,χ2検定において有意差は認めなかった。さらに,地域住民の大学卒業割合が高い地域では,有意にう蝕が少ない結果が得られたが,う蝕に関連する変数について級内相関係数を求めた結果,地域差の多くは個人レベルで説明されると考えられた。

結論 3歳児におけるう蝕とその要因の広がりをGISにより地理空間上で初めて可視化し,う蝕の背景にある地域性を分析し,居住する地域の環境要因とう蝕有病率の関係を明らかにした。今後は,分析結果をもとにう蝕有病率の低下に向けて,地域の実情に合った取り組みが必要と考えている。

キーワード う蝕,地域格差,小地域統計,GIS,個人要因,環境要因

 

 

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