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論文記事:東日本大震災の被災者における転居の範囲と健康状態との関連 201909-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第66巻第11号 2019年9月

東日本大震災の被災者における転居の範囲と健康状態との関連

菅原 由美(スガワラ ユミ) 遠又 靖丈(トオマタ ヤスタケ) 辻 一郎(ツジ イチロウ)

目的 東日本大震災で被害程度の大きかった沿岸部では,被災後に地区外へ転居した者が多い。しかし,転居の範囲と健康影響との関連については明らかではない。本研究の目的は,被災後の転居の範囲によって,被災者の健康状態が異なるかを検討することである。

方法 東北大学地域保健支援センターでは,東日本大震災前に宮城県石巻市の雄勝地区・牡鹿地区に居住していた者を対象として,毎年,被災者健康調査を実施している。震災7年目となる2017年6月,上記の者のうち,研究同意が得られている3,517名を対象に自記式アンケート調査票を配布した。このうち,有効回答が得られた2,342名(66.6%)を本研究の解析対象者とした。現在住所の回答に基づいて,対象者を「地区内居住(雄勝地区・牡鹿地区内居住)」「市内転居(石巻市内への転居)」および「市外転居(石巻市外への転居)」に分類した。アウトカムは,主観的健康感不良(あまり良くない,良くない),睡眠障害(アテネ不眠尺度が6点以上),心理的苦痛(K6が10点以上)とした。解析は,多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を用い,「地区内居住」群を基準とした「市内転居」群と「市外転居」群における各アウトカムについて,オッズ比と95%信頼区間(以下,CI)を算出した。調整因子は,性別,年齢,居住形態(震災前と同じ,プレハブ仮設,新居,災害復興住宅,その他),就業状況(就業中,求職中,無職)とした。

結果 対象者のうち,「地区内居住」群は1,216名(51.9%),「市内転居」群は846名(36.1%),「市外転居」群は280名(12.0%)であった。睡眠障害のオッズ比は,「市内転居」群で1.30(95%CI:1.02-1.66),「市外転居」群で1.42(95%CI:1.02-1.99)となり,被災地区から転居した群で睡眠障害のオッズ比が有意に高かった。さらに,転居の範囲と睡眠障害との関連は,震災前に居住していた地区から離れるほど強くなっていた(傾向性のp値=0.02)。一方,被災後の転居の範囲と主観的健康感,心理的苦痛に関連はみられなかった。

結論 被災後の地区外転居者では,睡眠障害リスクが高いことが示唆された。

キーワード 東日本大震災,被災者,転居地域,睡眠障害

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