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論文記事:墓数の推計と今後の予測モデルの確立に関する検討 202002-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第67巻第2号 2020年2月

墓数の推計と今後の予測モデルの確立に関する検討

久保 慎一郎(クボ シンイチロウ) 西岡 祐一(ニシオカ ユウイチ)
野田 龍也(ノダ タツヤ) 今村 知明(イマムラ トモアキ)

目的 墓は年間約130万人が死亡している中で,今後その需要が増大すると考えられている。しかし,墓制を見直す動きもある中,日本は少子高齢化が進み,人口は減少傾向にある。そのため現在は墓が増加しているが,将来は一転して人口減少により墓数の大幅な減少(未継承墓の増大)が見込まれる。よって,日本は未継承墓(無縁仏)が乱立する危機的な状況に陥る可能性がある。これは大きな社会問題となり得るが,正確な将来推計がないため問題提起されているとは言い難い。この推計は一見すると簡単だが,日本の複雑な墓の継承制度を考慮すると,男系の継承の複雑さや死亡・未婚で未継承となるため,きわめて困難な推計となる。本研究では,人口の推移と死亡率等より過去から将来にわたる墓数の推移について推計し,墓地行政への基準となる算定方法を確立することとした。さらに,墓制は文化や家族の在り方・心情などが影響することを含め,今後の墓制の在り方を検討する。

方法 墓数の推計モデルとして1960年(昭和35年)を起点とし,世代間は30年を想定し,基準となる第一世代の墓の数(その世代の長男の数)を100万基とし,継承のプロセスを経ることによってその推移を推計した。80年で1世代が終了すると仮定し,その後の5世代を経て2160年には,「継承墓」「新規墓」「未継承墓(無縁仏)」の3種類で墓数が何基になるか推計した。4世代以降の推計は3世代と同様の発生確率であったと仮定して,どのように推移するかを5世代目まで算出した。継承には様々な確率や誘因を伴うため,各種統計調査より未婚・死亡・男子の生まれる比率を確率化し,その世代ごとに何%継承するかを算出した。これらを基に墓数を集計し,簡易的な計算方法として合計特殊出生率を用いた墓数の推計と比較した。その結果をもとに今後の方策を政策提言し,未継承を低減させる方法を提唱した。

結果 合計特殊出生率を用いて単純に墓数を算出した際は,1世代目の時点で5%ほど墓数は減少し,3世代を経ることで半分以下となることがわかった。出生比率から計算した墓数の推計によって,墓数は3世代を経ることでほぼ2倍,5世代を経ることで2.6倍になることがわかる。また,既存の墓で継承する墓数は合計特殊出生率を用いた計算法方法とほぼ一致した。ただし,一方で未継承墓(無縁仏)は年々増加し,5世代を経ることで急激に増加することがわかった。今後の墓政としては,継承の在り方を変える,現在の形式にとらわれない様々な埋葬を行う,墓地のルールを変えるなどの方策が考えられる。

結論 今後日本では,墓数は増大するが,継承できる墓数は減少し,墓地には無縁仏があふれる状況がわかった。ただし,これは単純集計に基づいたものであり,今後の出生率や死亡率の変化によっては大きく数値が変わる可能性がある。従って,この数値が重要なのではなく,この数値をもとに今後の墓政の見直しを日本全体で見直すことが一番重要であるといえよう。

キーワード 墓数,未継承墓,新規墓,無縁仏,墓制

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