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論文記事:障害者手帳所持者数は,なぜ「推計」値か 202102-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第2号 2021年2月

障害者手帳所持者数は,なぜ「推計」値か

-障害者手帳の交付および所持に関する情報等の管理運用の現況-
今橋 久美子(イマハシ クミコ) 北村 弥生(キタムラ ヤヨイ) 竹田 幹雄(タケダ ミキオ)
竹島 正(タケシマ タダシ) 飛松 好子(トビマツ ヨシコ) 岩谷 力(イワヤ ツトム)

目的 現在,身体・療育手帳の所持者数は,標本調査の結果から「推計」されている。平成28年の身体障害者手帳所持者数の推計値は436万人,交付台帳登載数(発行数)は515万人であり,後者が約80万人多い。交付台帳は発行者が管理しており,登載情報は死亡等により手帳が返還された場合に台帳から削除される。未返還により死亡が交付台帳に反映しきれないことが,所持者数の推計値と交付台帳登載数との乖離の原因となっている。もし動態情報を管理している市区町村において手帳交付情報との照合作業が行われていれば,推計に頼らずとも手帳所持数が得られることになる。そこで本研究では,将来的な障害保健福祉データベース構築のための基礎的な情報収集の一環として,手帳発行数と所持者数に違いが生じる背景要因を明らかにするために,市区町村における障害者手帳の交付および所持に関する情報等の管理運用に関する現況調査を行った。

方法 全国1,741市区町村の障害福祉担当部門に調査票を郵送配付した。質問内容は,①障害者手帳交付情報の主な管理方法,②死亡や転出等動態情報との照合状況,③他の制度とのデータ連携状況とした。

結果 1,445市区町村(83.0%)から有効回答を得た。管理方法は,①専用システムを導入し,住民基本台帳システムにおける死亡や転出の情報が自動的に反映される,②都道府県から紙媒体で市区町村に送られた決定内容や住民基本台帳システムの情報を手動で入力する,③動態を全く確認していない,の3つのパターンがあった。方法は一様ではないものの,有効回答のうち,98%は電子媒体で交付情報等を管理し,96%は動態情報と照合していた。動態把握は,手当等の適切な給付のためにも不可欠である旨が自由記述に記載されていた。なお3障害で管理方法や専用システム導入率に大きな差はなかった。

結論 本研究では,市区町村を対象に調査した。回答した市区町村の9割以上において交付情報と動態情報を照合していることから,管理運用上の課題を解決することにより,正確な所持者数の捕捉が可能であることが示唆された。一方で都道府県においては,返還届が進達されない限り,障害者手帳交付台帳に動態情報を反映することが制度上困難である。全国的には都道府県と市区町村との情報共有方法も一様でないことが推察されることから,都道府県における交付台帳の管理運用に関する調査も今後必要と考えられる。

キーワード 障害者手帳,障害者数,交付台帳,市区町村,人口動態,情報管理

 

 

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