一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供 - 論文記事:障害福祉サービス事業所における工賃向上に寄与する取り組みに関する調査研究 20260802

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論文

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第73巻第8号 2026年8月

障害福祉サービス事業所における工賃向上に
寄与する取り組みに関する調査研究

 

米倉 裕希子(ヨネクラ ユキコ) 伊藤 泰三(イトウ タイゾウ)

目的 近年,障害福祉施策の改革が続く中,障害福祉サービス事業所は工賃向上に向けた取り組みが求められている一方で,利用者支援との両立の難しさが指摘されている。また,売上拡大の戦略として,障害者たちが作った商品ということを伝えて販売するのか伝えずに販売するのかといった2つのマーケティングアプローチがあるといわれている。しかし,工賃向上に寄与する経営戦略を統計的に分析する研究は少ない。よって,本研究は,工賃向上に寄与し,経営学的なアプローチの有効性を明らかにするため,事業内容および経営戦略と工賃との関連を明らかにすることを目的とした。

方法 A県社会就労センターの会員施設117事業所を対象に,質問紙調査を行った。利用者定員や年齢,作業内容,工賃などの基本情報の他に,22項目の工賃等向上の取り組みを4件法で回答してもらった。探索的因子分析を行い,因子と工賃との相関係数の算出,また障害福祉サービス事業所商品を積極的に伝えて販売することと工賃との関連についてt検定を用いて分析した。

結果 分析対象は53事業所で,工賃等向上の取り組みの項目間の探索的因子分析を行った結果,外向性の経営戦略,内向性の経営戦略,商品に関する経営戦略の3つの因子が抽出された。外向性の経営戦略と平均工賃,最小工賃,また内向性の経営戦略と平均工賃,最大工賃において相関係数0.3以上だった。障害福祉サービス事業所商品を積極的に伝えて販売することについては,非積極群が積極群より最小工賃の平均値が有意に高かった。

結論 工賃向上には,外向性の経営戦略と内向性の経営戦略が重要であり,最大あるいは最小工賃どちらを引き上げるかは,戦略によって異なる。障害者が作った商品を伝えないアプローチが工賃に寄与する可能性が示唆されたが,エシカル消費が醸成されていないことを表象していると考えられる。自主製品は工賃向上につながりにくいものの,多様な特性のある障害者の生産活動を支えている。よって,外向性の経営戦略を高め,新たな価値の創出と情報発信を取り入れた経営戦略が求められる。

キーワード 就労継続支援B型,工賃向上,経営戦略,自主製品

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