論文
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第73巻第8号 2026年8月 後期高齢者の健診受診とその要因荻原 牧子(オギハラ マキコ) 川原 靖弘(カワハラ ヤスヒロ) 酒井 美保(サカイ ミホ) |
目的 わが国の高齢化の進展に伴い,後期高齢者の割合が増加している。この層における疾病の予防・重症化予防策の核である健康診査(以下,健診)の受診率は低迷しており,健康寿命の延伸に向けた喫緊の課題となっている。先行研究では40歳以上や65歳以上を対象としたものが多く,後期高齢者に特化した健診受診要因の特徴は未解明である。本研究は,後期高齢者の健診受診の有無と関連する健診要因を明らかにすることを目的とした。
方法 A自治体の75歳以上の要介護認定高齢者を除く3,739名を対象に,2024年12月上旬に質問紙郵送調査を実施した横断的研究である。分析では,町の集団健診の受診の有無(目的変数)と,先行研究から選択した22項目の説明変数(本人の考えや志向,人的環境要因,時間・地理・機関・手段・経済・情報要因)との関連を,ロジスティック回帰分析を用いて検討した。調整変数として,年齢,性別,世帯構成,経済状態,持病による医療機関受診,医療機関受診科目の合計数を用いた。さらに,関連が強く示された要因と健診受診の有無の関係を,持病による受診科目ごとにFisherの直接検定で比較した。
結果 本研究では,同意ありおよび欠損値なしの1,238名(分析回収率33.1%)を分析対象とした。ロジスティック回帰分析の結果,健診受診ありと有意な正の関連を示した主な要因は,「健診は毎年受けるもの」(オッズ比(以下,OR)4.86)だった。一方,健診受診なしと有意な負の関連を示した主な要因は,「通院中ならば健診は必要ない」(OR 0.20)であった。持病による受診科目ごとの検討では,「通院中ならば健診は必要ない」と回答した者のうち,内科,呼吸器内科,循環器科,脳神経内科・外科,皮膚科,外科,泌尿器科,整形外科,眼科,歯科において,健診受診なしが有意に多かった。
結論 本研究は,後期高齢者の健診受診における最も強い要因が受診行動の習慣化であることを示した。この結果は,定期的な健診を促す啓発活動が極めて重要であることを示唆する。一方,最も強い未受診要因である「通院中ならば健診は必要ない」という誤認識は,持病による検査と健診での検査の目的・内容に対する理解不足を示唆する。これは持病による受診科目の3分の2において顕著な傾向を示したことから,持病による検査では代替できない健診の多角的な意義を明確に伝達することが,受診率向上の最重要課題となることが示唆された。
キーワード 後期高齢者,集団健康診査,集団健康診査受診要因,持病による受診科目






