第58巻第8号 2011年8月 定期健康診断有所見率の上昇と労働者の高齢化との関連牧野 茂徳(マキノ シゲノリ) |
目的 わが国の定期健康診断有所見率は上昇している。有所見率の上昇の一因として健康診断を受診する労働者の高齢化も関与している。そこで,定期健康診断有所見率の上昇と労働者の高齢化との関連について検討した。
方法 基準となる有所見率は都産健協が2007年に実施した性,年齢別有所見率調査結果を利用した。1990年から2008年までの性,年齢別就業者数は総務省統計局が実施した労働力調査の資料を用いた。基準となる有所見率と各年次の性,年齢別就業者数から性,年齢別の有所見者数を計算し,さらに合計の有所見者数を計算した。そして,合計の有所見者数と合計の就業者数を用いて,1990年から2008年の有所見率を計算した。
結果 1990年から2008年の就業者の平均年齢は男性が42.8歳から45.3歳に上昇した。女性は42.0歳から44.1歳に上昇した。55歳以上の就業者の割合は,男女とも増加している。1990年から2008年の間に所見のあった者の割合は2.4ポイント上昇した。聴力検査(4,000Hz)が2.0ポイント,血圧測定が1.8ポイント,血中脂質検査が1.2ポイント,胸部X線検査が1.1ポイント上昇した。
結論 胸部X線検査,心電図検査,血圧測定の有所見率の上昇は高齢化の影響を受けている。所見のあった者の割合の上昇は高齢化の影響は大きくない。
キーワード 有所見率,定期健康診断,労働者の高齢化