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第54巻第4号 2007年4月

脳卒中患者における自宅退院の時代変遷に関する研究

-富山県脳卒中情報システム事業より-
須永 恭子(スナガ キョウコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 遠藤 俊朗(エンドウ シュンロウ)
野村 忠雄(ノムラ タダオ) 野原 哲夫(ノハラ テツオ) 福田 孜(フクダ ツトム)
垣内 孝子(カキウチ タカコ) 木谷 隆一(キタニ リュウイチ)
飯田 博行(イイダ ヒロユキ) 瀬尾 迪夫(セオ ミチオ)

目的 入院患者数増と高齢化が進む脳卒中患者の自宅退院には,社会的支援が必要な場合が多く,在宅療養サービス利用の増加が予測される。そこで,富山県脳卒中ケアシステム事業登録者の自宅退院割合と富山県の在宅療養支援サービスの充足・利用状況を把握し,社会的支援の影響下,脳卒中患者の自宅退院の動向を考察した。
方法 富山県脳卒中情報システム事業の登録者のうち,発症年が平成3年7月から平成15年12月で,退院時死亡と退院先未定を除いた14,952名を抽出した。そのうち,30歳以上の14,040名と55歳以上の12,160名を分析の対象とした。分析には,登録情報のうち,「退院先・年齢・発症年・自力による行動範囲・認知症状の有無」を使用した。自宅退院の概況として30歳以上の性別・年齢別・発症年次(時代)別の各々について自宅退院割合を,自宅退院の時代変遷として,1991~1993年を基準に年齢調整自宅退院比と時代以外の影響を調整した自宅退院のオッズ比を求めた。
結果 退院先の割合は,自宅退院が最も高く69.9%で,次いで転院,その他の順だった。年齢別,時代別の動向では,男女ともに高齢と時代推移に伴い自宅退院割合はおおむね減少していた。1991~1993年を基準とした時代別年齢調整自宅退院比では,男性の1994~1995年のみ1を越え,それ以外では男女ともに1未満であった。自宅退院のオッズ比について,1991~1993年に対する各時代群の結果は,すべて1以下で,時代推移に伴い低下していたが,介護保険開始年の2000~2001年では,その低下の傾きがやや緩やかになっていた。医療・福祉制度改正を考慮し,介護保険開始以降,各施設数・利用者数の推移を社会的支援の時代変遷として確認した。富山県の療養型病床群の病床数・新患者数は経年的に増加し,平成12~15年の病床利用率は90%台であった。また,介護老人福祉施設,介護老人保健施設の利用者数増加率は全国より高く,介護老人福祉施設の方が高かった。
結論 自宅退院割合の時代推移に伴う低下が明らかになった。この低下を介護保険開始以降の在宅療養サービスにおける各施設数・利用状況から検討した結果,介護老人福祉施設・療養型病床群の施設充実とその利用が進む中,脳卒中患者は退院先の幅を広げ,自宅退院以外を選択していることが考えられた。
キーワード 脳卒中,自宅退院,脳卒中情報システム事業,介護保険

 

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