第53巻第4号 2006年4月 日本における死因構造の推移(1950~2000)-平均寿命の性差への寄与-吉永 一彦(ヨシナガ カズヒコ) 畝 博(ウネ ヒロシ) |
目的 戦後,日本の平均寿命の伸長は目覚しく,これに伴いその性差も拡大し,1950年で3.50年,1970年では5.35年,1980年で5.41年,2000年では6.88年といずれも女性の方が長い。その性差の推移について年齢分布と主要な死因構造の差異から観察する。
方法 年次ごとにJ.H.Pollard法により,平均寿命の性差の年数を年齢階級および各主要死因による寄与年数に分割する。
結果 平均寿命の性差への寄与年数は,1950年では結核0.54年,脳血管疾患0.38年,不慮の事故0.76年であり,1970年では結核0.24年,悪性新生物0.83年,脳血管疾患1.30年,不慮の事故1.15年となり結核の寄与が減少し,悪性新生物と脳血管疾患は増大した。1980年では悪性新生物がさらに増大し1.31年,脳血管疾患0.86年,不慮の事故0.69年である。2000年では悪性新生物が大きく突出して2.24年,虚血性心疾患0.51年,脳血管疾患0.62年,肺炎0.65年,不慮の事故0.57年,自殺0.51年でほぼ同程度である。年齢層では65~74歳をピークとした55歳以降の中高齢層での格差が大きく,年次とともにそれらはより顕著になり,また高齢へとシフトしている。また,20歳前後の寄与もやや大きい。
結論 平均寿命の性差の背景として,1950~1970年では結核,不慮の事故および脳血管疾患による寄与が大きく,その後,特に1980年以降では悪性新生物による寄与が急激に増大し,今後の性差の推移に大きな影響を与えると思われる。また,年齢層では20歳前後の不慮の事故と特に55歳以降の中高齢層での格差が拡大し,さらに高齢へとシフトしている。しかしながら,1999年以降,格差の伸びが急速に減衰している。その推移についてはまだ資料不足のため今後の課題とするが,この現象は今後の男女の寿命および性差の予測を困難にしている。
キーワード 平均寿命,性差,寄与年数,主要死因別死亡率