第52巻第10号 2005年9月 OLAPによるDPCデータの解析伏見 清秀(フシミ キヨヒデ) |
目的 平成15年にわが国独自の診断群分類DPC(Diagnosis Procedure Combination)を用いた包括評価が導入されているが,制度設計上議論となる点が残っており今後の改善が必要とされている。そのためには,毎年7月から10月にDPC包括評価対象病院から収集される膨大な調査データの効率的で正確な解析が不可欠であるが,その手法は確立されていない。本稿では,DPC調査データの解析にOLAP(On Line Analytical Processing)を活用する方法を検討し,その実効性を検証することを目的とした。
方法 調査データからリレーショナルデータベースと多次元データキューブを構築し,ネットワークおよびローカルファイルを介してクライアントソフトを用いてOLAP解析を実施した。OLAPキューブは定義表の項目に沿って7から26個の集計軸を設定し,病名集計軸に関してはICD10コード,DPC傷病名分類,MDC分類レベルの3段階の粒度で集計する設計とした。副傷病は併存症と続発症に分けてその影響度を集計した。
結果 システム構築,分析の実施,データの配布の実現可能性と有用性が確認された。対話的な分析により,手術グループの差異による在院日数への影響の違い,化学療法,放射線療法などの在院日数,診療報酬点数への影響の違いなどが示された。また,副傷病の解析では,DPC傷病分類レベルの集計によって,循環器系疾患においては呼吸不全,腎不全の影響が大きく,消化器系疾患においては肺炎の影響が大きいなど,主たる疾患によって医療資源必要度に影響を与える副傷病が異なることが示された。
結論 DPC調査データの解析におけるOLAP法の活用の実現可能性と有用性が示された。特に現在のDPC定義表では十分に整理されていない副傷病の評価については意義が大きいと考えられる。DPCの恒常的な見直し作業にOLAP法が活用され,データに基づく医療評価の1つのツールとしての地位が確立されることが期待される。
キーワード 包括評価,診断群分類,医療費,医療評価,探索的分析