第51巻第8号 2004年8月 医師臨床研修制度義務化に伴う地域医療への影響の検討-福岡県メディカルセンターによる病院調査の結果から-大河内 二郎(オオコウチ ジロウ) 堀口 裕正(ホリグチ ヒロマサ) 鍋島 史一(ナベシマ フミカズ)佐藤 彰記(サトウ アキノリ) 横倉 義武(ヨコクラ ヨシタケ) 陣内 重三(ジンノウチ ジュウザブ) 松田 峻一良(マツダ シュンイチロウ) 伊東 清四郎(イトウ セイシロウ) 堤 康博(ツツミ ヤスヒロ) |
目的 2004年4月から新医師卒後臨床研修が施行されると、研修医の病院外での勤務が制限される。福岡県メディカルセンターでは、新医師卒後研修の影響を明らかにする目的で、福岡県内の病院に対して、この新臨床研修への参加予定の有無および大学から派遣されている医師数、研修医数を調査した。この調査では、新臨床研修に参加する病院と参加しない病院の特徴や、これらの区分における大学派遣医数、研修医数を定量的に記述し、新臨床研修制度が地域医療を担
う医師数にどのような影響を与えるか推察した。
方法 福岡県の開設者別病院名簿(2003年1月現在)をもとに県内の全484病院に対し、2003年2月、郵送によるアンケート調査を行った。調査内容は、新臨床研修への参加予定状況、病院の属性、業態別(常勤、非常勤の外来、当直、日勤)の大学からの派遣医数、研修医数等であった。
結果 対象病院のうち324病院から回答を得た(回収率67%)。このうち、大学付属病院等9病院と回答に不備があった8病院を除いた307病院(県内全病院に対して63%)を用いて検討を行った。これらのうち48病院(16%)が新医師卒後臨床研修の指定を受ける予定であると回答した。これらの病院の73%は、現在臨床研修を行っているか、各種学会の臨床研修病院の指定を受けていた。回答病院における全常勤医師数は4,349人であり、このうち医科大学から派遣された医師は1,915
人(全常勤医の44%)であった。また大学から派遣された研修医は234人(同5%)であった。大学から派遣された医師に占める常勤の研修医の割合は12%であった。一方、新臨床研修の指定を受ける予定がない187病院(61%)における常勤医師数は1,339人で、このうち大学派遣医数は447人(全常勤医の33%)であった。これらの病院での大学派遣医に占める研修医の割合は、常勤6%、非常勤の外来診療8%、非常勤の当直15%、非常勤の日勤診療15%であった。
結論 研修医のアルバイトの禁止により影響を受ける医療機関は比較的少なく、新医師卒後臨床研修の実施に伴って勤務医師数が大幅に減る医療機関は例外的であると考えられた。一方、福岡県内の病院は派遣医師の多くを大学に依存していた。したがって、新卒後臨床研修の実施に伴い大学派遣医師の引き上げが起きれば、その影響は無視できないと推察された。
キーワード 医師数、研修医、卒後研修、病院、地域医療、大学病院