メニュー

一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ
  • img01
  • 医療職のための統計セミナー
  • 図説国民衛生の動向2024/2025
  • 国民衛生の動向2024/2025
  • 国民の福祉と介護の動向2024/2025
  • 生物統計学の道標 研究デザインから論文報告までをより深く理解するための24講

第52巻第15号 2005年12月

働き盛り世代における脳卒中発症の
生活背景要因に関する研究

巴山 玉蓮(トモヤマ ギョクレン) 藤田 幸司(フジタ コウジ) 五十嵐 久人(イガラシ ヒサト)
白鳥 啓子(シラトリ ケイコ) 星 旦二(ホシ タンジ) 

目的 長野市における働き盛り世代の脳卒中発症の生活背景要因を明らかにする。
方法 脳卒中発症の対象年齢を働き盛り世代(40 歳以上65歳未満)とした。40~64歳で脳卒中を発症し,脳卒中情報システムおよび保健師が把握している現在74歳以下の者250人をケース(脳卒中発 症群)とし,現在40~64歳でこれまで脳卒中を発症していない長野市在住の約1,200人(対象人口の1%)をコントロール(健常群)としてケース・コ ントロール研究を行った。脳卒中発症群については,保健師が個別面接により本人から聴取し,健常群については郵送法によりアンケート調査を実施した。
結果 脳 卒中発症群と健常群との比較において有意な差がみられた因子について,独立した影響力を明らかにするために,多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比 を算出した。脳卒中の発症に独立して寄与することが明らかとなったリスクファクターとそのオッズ比は,①高血圧である(12.6),② 喫煙している(8.8),③揚げ物・炒め物など油を使う料理をほぼ毎日食べている(8.3),④味付けの濃い物をほぼ毎日食べている(5.7),⑤自分の 判断で仕事の量や期限を調整できない状況にある(5.3),⑥卵・卵料理をほぼ毎日食べている(5.3),⑦年齢が高い(3.8),⑧近親者に脳卒中を発 症した人がいる(3.0)であった。地域的な特色と考えられた川魚,イナゴなどの食習慣については,脳卒中との関連が認められなかった。
結論 今 回の調査によって,働き盛り世代にある人の脳卒中の発症に独立して寄与する要因が明らかとなった。加齢や,近親者に脳卒中を発症した人がいるという遺伝的 要因は個人で制御できるものではないが,①高血圧を上手にコントロールすること,②喫煙をしないこと,③食生活では,揚げ物や油や卵料理をとりすぎないよ うにし,薄い味付けを心がけること,④生活面では,仕事の量や期限を調整しながら,過労やストレスを制御し,楽しく継続的に運動することは,個人・企業・ 地域レベルの取り組みや専門家の支援によって制御可能と考えられる。これらの科学的なエビデンスを児童生徒や学生を含めた市民に還元し,働き盛り世代にお ける脳卒中をこれまで以上に減少させ,その発症を遅らせることが大切であることが示唆された。
キーワード 脳卒中,働き盛り,ケース・コントロール研究,リスクファクター,多重ロジスティック分析

 

論文