第49巻第4号 2002年4月 乳幼児突然死症候群関連情報の
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目的 乳幼児突然死症候群(SIDS)予防対策の効果について,従来の死亡率推移だけでなく関連情報受容後の保護者の行動変容状況で評価するため、保護者に対する調査を実施した。
方法 平成7~13年までのSIDS死亡児の年次推移を観察した。新潟,岐阜,静岡,広島県及び横浜市における234市町村・区において,平成11年11,12月に実施された1 歳6 か月児健康診査対象児の保護者14,879入を調査対象とし,自記式無記名の調査票を用いてSIDSに関する項目の調査を行った。発症危険因子等の精報取得にあたって,各取得経路と危険因子除去に向けた保護者の行動変動変容との関連についてロジスティック回帰モデルを用いて解析した。
結果 10.900人から同答を得た(回答率73,3%)。病院・診療所において危険因子等の情報を取得した人は19,O%, 保健所では3. 7%と低率であったが,テレピでは71.1%とマス・メディアでは高率を示した。友人からの情報取得率も9.2%と低値であった。行動変容の程度について,情報取得先や両親の性,年齢,子どもの数等の変数で調整後解析したところ,病院・診療所での情報取得は,全ての危険因子に関連した行動変容の惹起に有意な影響を与えていた。また,栄養方法に関する危険因子については保健所から,寝かせ方については子育てグループから,喫煙習慣については友人から情報を取得することがそれぞれ行動変容に有意に結びついていることが認めらた。マス・メディアからの情報取得と行動変容の有無の間には全てめ危険因子において関連が認められなかった。
結論 医療機関,行政機関もしくは個人的情報源に比してマス・メデアめ方が圧倒的に情報量及び伝達効率は高いが,情報伝達の最終的効果である情報取得後の行動変容の有無に着目すると,逆に病院・診療所や保健所,育児グループ等による情報伝達に効果が認められ,マス・メディアには認められないことから,情報提供自体の効率と情報取得後の行動変容の程度とには 明確な乖離が認められることが明らかとなった。情報受容者の行動変容を狙った情報提供に際して従来の画一的手法ではもはや限界があることから,今後は情報内容及び受容者属性に応じた多様な伝達手法の展開・組み合わせが必要不可欠であリ,今回の解析結果はそれらの考え方に1つの根拠を与えるもめと考える。
キーワード 乳幼児突然死死症候群(SIDS),人口動態統計,危険因子,行動変容,ロジスティック回帰分析,母子保健