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第56巻第15号 2009年12月

がん専門病院における禁煙支援クリニカルパスの実施

田中 政宏(タナカ マサヒロ) 田中 英夫(タナカ ヒデオ) 谷内 佳代(タニウチ カヨ)
泉本 美佳(イズモト ミカ) 赤木 弘子(アカギ ヒロコ) 大西 聖子(オオニシ セイコ)
松尾 茂子(マツオ シゲコ) 道平 恵子(ミチヒラ ケイコ) 若林 榮子(ワカバヤシ エイコ)

目的 都道府県がん診療連携拠点病院である大阪府立成人病センターにおける,入院喫煙患者を対象とした禁煙支援クリニカルパス(以下,パス)の実施について報告する。
方法 初回入院の喫煙患者(禁煙開始後1カ月以内を含む)に対して以下のような禁煙支援介入を実施した。同意を得ることのできた喫煙患者に対して,入院予約日にパスを発行して外来看護師による禁煙指導と情報提供を行い,入院日に病棟看護師による禁煙指導と情報提供を行った。また,退院日には病棟看護師による入院中の禁煙状況の確認,禁煙継続の勧奨と情報提供を行い,さらに退院後1カ月,6カ月時点での調査票の送付による禁煙状況の確認(自己申告によるフォローアップ)を行った。実施方法を標準化するために,それぞれの介入はいずれもパスと禁煙情報提供用のリーフレットに基づいて行われ,実施時間は原則として数分間の簡単なものとした。
結果 2005年5月~2009年3月までに1,789人(年齢中央値59歳)に対してパスを発行した。うち,2009年3月末までに退院した1,585人(以下,パス発行者)の77%が入院予約日時点で喫煙中であり,20%が禁煙開始後1カ月以内であった。パス発行者の入院予約から入院までの日数の中央値は18日であり,入院までの喫煙状況は,対象者の52%が入院前日まで喫煙し,13%が入院前2~7日以内の間に喫煙していた。入院時介入はパス発行者の82%に行われており,入院中に喫煙した者は21%であった。退院時介入は対象者の67%で実施されており,そのうちの81%がフォローアップに同意していた。同意者のうち,退院後1カ月時点,6カ月時点での禁煙継続割合(未返答者は喫煙者とみなす)はそれぞれ48%,42%であった。
結論 パス実施上の課題としては以下が考えられた。①入院時・退院時ともに介入を実施できた患者の割合は対象患者全体の7割程度であり,退院時が特に低く,ともにパス制度の導入時から漸減傾向にあったこと。その理由としては,職員の入れ替わりと,パスの必要性の認知が他のクリニカルパスよりも低い可能性などが考えられた。②パスの対象者が比較的禁煙困難な者であり,かつ介入がごく簡単なものであることから考えると,退院後6カ月時点での禁煙継続割合が4割という値は予想以上に高い印象をうけること。この理由としては,入院・手術という環境介入効果が大きいこと,また自己申告の不正確さの可能性等が考えられた。③退院後の禁煙継続のためには,禁煙指導のフォローアップ体制の強化が必要であり,患者に影響力の高い主治医の外来での協力を得る方策の検討が望まれること。他に,入院前後の禁煙治療とパスの連携の強化が望まれる。
キーワード 禁煙,クリニカルパス,入院,治療効果,がん,循環器

 

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