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第56巻第3号 2009年3月

札幌市における放火の疫学

西 基(ニシ モトイ)

目的 放火事例について,時間的要因の側面を中心として疫学的解析を行う。
方法 2003年1月1日から2007年12月31日までに札幌市消防局が放火もしくは放火の疑いと認定した695件の火災事例を対象とした。対象の5年間のすべての日を休日の観点から分類し(3連休以上の連休入りの前日・中日・明け,通常日曜・通常月曜など),それぞれの日における放火発生頻度を算出した。放火発生時刻は通常の社会活動の観点から5種類(未明・朝・昼・夕刻・夜)に分けた。放火の目的は自殺とそれ以外(ほとんどが単純な放火)に分けた。
結果 対象とした5年間の1日当たり件数は平均0.38件であったが,5月から10月は概して平均より多く,11月から4月までは平均より低かった。これは全国における傾向とは正反対であった。通常金曜から通常月曜にかけて,また連休などの前から後にかけて,発生頻度が単調に増加した。全体の約2割が通常月曜や連休明けなどの休日明けに発生していた。時刻別にみると,全体の約6割が未明と夜に発生していた。全体の約7%を占める自殺放火は昼間に多く,自殺以外の放火とは対照的な時間的分布を示した。通常日曜夜から通常月曜未明にかけて自殺以外の放火が多くみられたが,連休明けは,自殺放火が多いこともあって昼間の頻度が高かった。
結論 札幌市において冬季に放火の頻度が低下することは,低気温や降雪が放火の意志を削ぐことが一因と推測される。一般に自殺は長期休暇明けや週明けに多く発生するが,自殺放火はもちろん,それ以外の放火の特徴もこれと類似しており,全国における失業率と単位人口当たりの放火発生率・自殺率・離婚率の年次推移が極めて強い相関を示したこととも合わせ,放火についても自殺や離婚と共通する社会病理学的背景が想定された。
キーワード 疫学,時間的要素,社会病理学,放火

 

論文