第58巻第11号 2011年9月 訪問看護利用者数および訪問看護師必要数の推計中島 民恵子(ナカシマ タエコ) 八巻 心太郎(ヤマキ シンタロウ) 吉池 由美子(ヨシイケ ユミコ)井ノ口 珠喜(イノクチ タマキ) 福田 敬(フクダ タカシ) 新野 由子(ニイノ ヨシコ) |
目的 本研究では,2020年までの訪問看護サービス利用者数の推計を行うことで,今後必要とされる訪問看護師数を把握することを目的とする。
方法 本研究では,訪問看護利用者数および訪問看護師必要数の推計を行うための枠組み構築を行うとともに,必要なデータを収集し,推計を行った。訪問看護利用者数については,2つのシナリオを設定して推計を行った。また,訪問看護師必要数については,処遇改善等の要件を変化させた場合の訪問看護師必要数の推計を行った。
結果 現状の要介護認定率と訪問看護利用率をベースとし,訪問看護利用者数を推計したところ,訪問看護利用者数は2009年時点の340.4千人(うち介護保険277.8千人,医療保険62.6千人)から,2020年には少なくとも489.5千人(うち介護保険414.7千人,医療保険74.7千人)まで伸びることとなり,全体として149.1千人分の利用ニーズが増加することとなった。施設サービス利用率を下げたシナリオで訪問看護利用者数を推計したところ,443.9千人(介護保険のみ)の利用ニーズが見込まれた。一方,医療保険の訪問看護については,2020年までの現状ベースでの伸び(1.19倍)を1.5倍または2.0倍と仮定して推計を行ったところ,1.5倍の場合は93.9千人,2.0倍の場合は125.2千人の利用ニーズが生じた。これらの訪問看護利用者数に対する訪問看護師必要数については,2009年時点の36,687人から,現状の労働時間の場合は2020年に52,756人,労働時間を1,800時間に改善した場合は63,158人が必要となった。
結論 2020年の訪問看護利用者数は増加が見込まれ,それらに対応するための訪問看護師は,2009年の時点と比較すると,2020年の時点では,約16,000人(処遇改善した場合は約26,500人)の訪問看護師が不足することがわかった。今後,増加する訪問看護の利用ニーズを満たすために必要な訪問看護師の確保は,喫緊の課題である。
キーワード 訪問看護利用者数,訪問看護師の確保,推計,利用ニーズ