第57巻第5号 2010年5月 マネジメントサイクルに基づく
近藤 今子(コンドウ イマコ) 酒井 映子(サカイ エイコ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) |
目的 今日,重要性が一層高まっている市町村公衆栄養活動がマネジメントサイクルに基づき実施されるために,先行調査で鍵を握ることが示唆された目標設定の状況および関連要因を明らかにし,目標設定の方法を検討することを目的とした。
方法 愛知,岡山,静岡県の政令市を除く市町村の行政栄養士147人に対し平成19年11,12月に郵送により自記式無記名でアンケート調査を行い,113人(回収率76.9%)から得た回答を分析した。調査内容は目標設定の状況,目標設定への指示,実態把握,相談機関,研修,評価に関する項目である。項目間の検討にはピアソンのχ2検定,さらに有意の項目にスピアマンの順位相関を用いた。p<0.05を有意とした。
結果 目標設定の状況は,3県間に差はなく,「ほとんど設定」と「設定のほうが多い」で46.4%,設定の必要性は75.7%が有るとしていた。評価は「ほとんど実施」と「実施のほうが多い」で53.2%であった。目標の設定と評価の実施は有意に関係していた。実態把握に関して,情報の活用は市町村独自で実施する調査等の労力を要するもので低く,プリシード・プロシードモデルに対応する各項目の把握は行動とライフスタイル,環境,準備・強化・実現因子で低かった。いずれも,目標設定をしているほうが良好であった。目標設定は,良い経験の有無,組織内の目標設定の指示の有無,指示がある場合の目標設定の意識,評価の実施,目標設定の必要性の意識,研修の活用,目標の設定方法が分からないとの間に有意な関連を認めた。また,指示がある場合の目標設定の意識は,良い経験の有無,評価の実施,目標設定の必要性の意識,組織内の目標設定の指示の有無との間に,さらに,目標設定の必要性の意識は,良い経験の有無,困った経験の有無,研修の受講との間に有意な関連を認めた。目標設定に関する研修は49.6%が受け,研修を活用できたとする約6割の目標設定は良好であった。
結論 目標設定の関連要因は,「組織の指示と指示への対応」「目標設定にかかる経験」「専門能力」「資質向上のための支援」に大別できた。指示は目標設定を促し,目標設定による良い経験が,より積極的な目標設定につながると推察される。さらに,目標設定に必要なスキルを確保できる研修や支援が目標設定の実現には必要である。
キーワード マネジメントサイクル,市町村公衆栄養活動,目標設定,評価,指示,専門能力