第54巻第11号 2007年10月 日本人女性の出生動向における年齢・時代・世代影響と出生数の将来推計小田切 陽一(オダギリ ヨウイチ) 内田 博之(ウチダ ヒロユキ) |
目的 ベイズ型age-period-cohort(APC)分析を使用して,1985年から2005年の期間の日本人女性(19~38歳)による出生動向に対する年齢,時代およびコホート(同年代出生コホート)の影響について明らかにし,さらに2006年から2018年までの出生数を推計することを目的とした。
方法 1985年から2005年までの人口動態調査によって得られた19歳から38歳の母の年齢別出生数と出生順位別出生数(第1子,第2子および第3子以上の合計)および人口推計年報に記載された各歳別日本人女子推計人口を使用して標準コホート表を作成した。これにベイズ型APC分析を適用して,出生動向に与える年齢,時代,コホートの各変数についてそれらの影響の大きさ(効果)を推定した。さらに,2006年から2018年の期間の当該年齢層の日本人女性の出生数について推計した。
結果 日本人女性の総出生の動向に対しては,3効果のうち年齢効果が最も大きく,28歳で出生への効果が最大であった。時代効果は1992年を変曲点として低減トレンド(トレンドは各効果の変化の方向性を指す)から増大トレンドへの転換が認められたが,効果の大きさは他の2効果と比べて相対的に小さかった。コホート効果は年齢効果に次いで大きく,1961年生まれ以降のコホートにおける低減トレンドが,1977年生まれを変曲点として,以降のコホートでは増大トレンドに転じていた。出生順位別の出生動向に対する分析結果においても年齢効果が最も大きく,効果が最大となる年齢は第1子で26歳,第2子で29歳,第3子以上では31歳であった。時代効果は他の2要因と比べて小さく,出生動向への影響は小さかった。コホート効果は,第1子の場合は1963年生まれ,第2子では1959年生まれ,第3子以上では1957年生まれ以降のコホートでの低減トレンドが,第1子と第2子の場合には1977年生まれ,第3子以上の場合には1973年生まれを変曲点として増大トレンドに転じていた。2006年から2018年の期間の年間出生数は,2005年の出生数102.2万人(実測値)から減少を続けて,2018年には約81.0万人(95%信用区間:54.1~118.8万人)にまで減少すると推計された。
キーワード 出生,ベイズ型age-period-cohort分析,日本人女性,少子化