第53巻第8号 2006年8月 介護保険制度を利用した埼玉県の健康寿命の算出池田 祐子(イケダ ユウコ) 生嶋 昌子(イクシマ マサコ) 長谷川 紀美子(ハセガワ キミコ)徳留 明美(トクトメ アケ ミ) 高野 眞理子(タカノ マリコ) 峰岸 文江(ミネギシ フミエ) 丹野 瑳喜子(タンノ サキコ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) |
目的 埼玉県では,新たな健康づくり行動計画「すこやか彩の国21プラン」を策定し,平成22年度を目標年とした健康づくり運動を推進中であり,このプランの達成度や効果が把握できる健康の総合指標として「埼玉県の健康寿命」を算出し,また同指標の算出が簡単に行えるソフトの作成を目的とする。
方法 生命表の作成にはChiangの方法を用い,「障害発生時点」を「介護保険制度における要介護等認定を受けた時点」としてとらえ,「要介護等認定を受けないで生活できる期間」を「健康寿命」とした。また,平均余命に対する健康寿命の割合を健康割合とし,埼玉県全体と県内医療圏(13)別に分析した。健康寿命算出ソフトの作成は,エクセルVBAマクロと関数を利用して行った。
結果 埼玉県の健康寿命は,65歳男性で14.73年,75歳で7.78年,65歳女性で16.35年,75歳で8.13年であった。65歳,75歳では女性の方が健康寿命が長いが,85歳になると,男性3.09年,女性2.43年と逆転した。健康割合は,65歳男性で84.5%,75歳で73.1%であるが,女性はそれぞれ73.4%,57.4%で,65歳,75歳ともに女性の方が低かった。医療圏別では,65歳健康寿命は男性が14.16~15.05年,女性が16.01~16.94年で,男女とも県南・県南東部で低かった。65歳健康割合は,男性が83.4~86.2%,女性が71.1~76.7%で,男女とも県北部で高かった。作成した健康寿命算出ソフトは,「埼玉県の健康寿命」をはじめ,平均寿命(余命)や健康割合などが医療圏別,市町村別に算出可能であり,最新データを追加することによって,今後も継続して活用することが可能である。
結論 介護保険制度を基に算出する健康寿命は,1)既存の統計資料の活用が可能であるため,継続的に算出可能で,経年評価ができる,2)全国的に統一された手順と基準に沿って要介護度の認定作業が行われていることから,自治体間の比較が可能である,3)健康づくり事業の達成度や効果が把握できる,などの特徴をもつ指標である。また,作成した健康寿命算出ソフトは,エクセル上で稼働し,低コスト,簡単操作であり,集団の健康指標算出ツールとして利便性が高いものと言える。
キーワード 介護保険制度,健康寿命,健康割合,健康寿命算出ソフト