第53巻第2号 2006年2月 介護認定と入院を考慮した新しい健康余命とその特徴京田 薫(キョウタ カオル) 丸谷 祐子(マルタニ ユウコ)伊藤 美樹子(イトウ ミキコ) 早川 和生(ハヤカワ カズオ) |
目的 入手可能な既存データを用いて算定が簡便な新たな地域指標を提案することを目的とし,介護認定の有無と入院受療の有無を用いた健康余命DFLE(Osaka University DFLE:OUDFLE)をSullivan法によって都道府県別に推定し,既存の健康余命との比較からその特性を検討した。
方法 健康の定義を「介護認定または入院受療の有無」と規定し,直接法によって標準化した上で,Sullivan法に基づくOU-DFLEを,性,65歳,75歳,85歳の年齢階級,都道府県別に算定した。OU-DFLEと既存の4つの健康余命との比較には,性・年齢別にKruskal-Wallisの検定を行い,ボンフェローニの不等式を用いて多重比較を行った。さらに,都道府県単位ごとに求めたOU-DFLEと4つの比較対照の健康余命を用いて,健康余命を従属変数とし平均余命で回帰させ,決定係数(R )を検討した。最後に,すべての健康余命をOU-DFLEを基準にして都道府県順位に並び替えて観察し,それぞれの健康余命の質の特性を検討した。
結果 OU-DFLEの健康余命/平均余命比は,65歳時,男性87.87%,女性89.23%,75歳時,同80.15%,84.34%,85歳時,同68.56%,80.91%と,性別では女性が大きく,男性では75歳から85歳の間で著しく低下した。また,OU-DFLEは75歳男性を除く各年齢階級において男女ともすべての既存値と有意差が認められた。次に,健康余命を従属変数とし平均余命で回帰させた結果,OU-DFLEの決定係数(R )は,4つの比較対照の健康余命と比べて男性では0.33,女性では0.42と低かった。
結論 4つの比較対照の健康余命には,相互に類似性が認められたのに対し,OU-DFLEには,女性の健康余命/平均余命比が大きく,平均余命との弁別性が高いという特徴が明らかになった。データ入手が容易で,地域の実情を反映しやすいOU-DFLEは,市町村や二次医療圏といった小規模な地域の指標として用いるのには適していると言える。
キーワード DFLE,高齢者,Sullivan法,介護保険認定,入院受療,地域指標