第52巻第5号 2005年5月 筋萎縮性側索硬化症患者における
岡本 和士(オカモト カズシ) 紀平 為子(キヒラ タメコ) 近藤 智善(コンドウ トモヨシ) |
目的 筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)患者におけるQOL(生活・生命の質)の維持・確保のための精神的支援を含めた本人・家族と医療・福祉従事者との間の支援体制の構築が急務とされている。そこで,本研究の目的は,ALS患者のQOLを1年前の状況との比較から評価するとともに,その変化に関連する要因を明らかにすることである。
対象と方法 2004年9月に,愛知県内に居住するALS患者258名に郵送による質問票調査を行い,回答の得られた98名(回収率:38.0%)を解析対象とした。QOL関連要因として「身体の痛み」「精神的安定度」「食欲」「睡眠状況」「コミュニケーション」を用い,1年前との比較からQOLの変化の状況を評価した。QOLの変化の指標として,各々の要因について変化の程度(悪化=1点,不変=0点,改善=-1点)を合計して求めたQOL低下度を用いた。
結果 5つのQOL関連要因のうち1年前と比べ悪化したと答えた者の割合が最も高かった要因は「精神的不安定の増加」で,次いで「身体の痛みの増加」であった。QOL低下度と性,年齢,発症時年齢およびADLとの間に有意な関連はなかった。QOL低下度は精神的活動性の高いものほど有意に小さかった。また,人工呼吸器非装着者のQOL低下度は装着者に比べ有意に大きかった。
結論 ALS患者のQOLの維持・確保のために,患者家族や地域の医療担当者を含めた包括的な精神的活動性および食事量の維持・確保のためのサポート体制を構築する必要性を示唆する知見を得た。
キーワード 難病,筋萎縮性側索硬化症,QOL,ソーシャルサポート