第50巻第13号 2003年11月 医療関係者の睡眠習慣実態について草野 昌樹(クサノ マサキ) 藁谷 暢(ワラガイ ミツル) 金子 信也(カネコ シンヤ)佐藤 晶彦(サトウ マサヒコ) 前田 享史(マエダ タカフミ) 佐々木 昭彦(ササキ アキヒコ) 田中 正敏(タナカ マサトシ) |
目的 睡眠習慣は日常の生活習慣のベースをなすものであり,睡眠習慣の乱れによって心身の疲労が生じ,うっかりミスや事故にもつながりやすいと考えられる。医療関係機関では夜勤が必須で,医師,看護師などは夜勤や交替制勤務などによって睡眠習慣を崩しやすい。看護師の場命には交替制勤務体制をとっているが,医師の場合には明確に体制化されておらず,医療関係者のなかでも睡眠習慣等については差異が大きいものと考えられる。今回は医療関係者の健康保持,増進を図っていく上で重要な睡眠習慣等についての基礎資料を得ることを目的に,医療関係者を対象に睡眠習慣の状況を調査した。
方法 某医科大学付属病院に勤務する医師,看護師,そして対照群として職員.医学部学生を含め,計1.341人を対象として睡眠習慣についてのアンケート調査を実施し,グループ間で比較検討を行った。
結果 医師の睡眠時間は短く,看護師,職員,学生の睡眠時間との間に有意差がみられた。また,いずれのグループにおいても,「睡眠は足りていない」と申告する割合が高く,グループ間に有意差はみられなかった。交替勤務体制が行われている看護師では,睡眠を確保している傾向がみられた。10項目からなる生活習慣(睡眠,入浴,過労,肉体的疲労,精神的疲労,慢性疲労,うつ状態,野菜嫌い,休日,趣味)をスコア化した生活習慣スコアでは,学生に比べ医師と看護師が有意に悪かった。
考察 夜勤については,睡眠時間との関係から日内リズムをなるべく阻害しないように夜勤勤務時間を短時間にとどめ,当直後の休息を確保できる勤務時間間隔への配慮,交替制勤務の場合には,社会環境,職場環境の影響,家庭内の男女の役割分担などについての検討が重要と考える。一般的に医師の勤務に交代制は取り入れられていないが,睡眠不足,睡眠習慣の乱れに伴う過労や医療ミスにつながることも憂慮され,医療従事者,労働者として交替勤務体制の導入が必要と考える。全体的に医療従事者の睡眠,ライフスタイルについては,勤務体制の検討,効率的に疲労回復できる環境条件の確保が求められ,個人においては,休養の取り方,睡眠の取り方、休日の過ごし方などへの配慮が必要と考える。
キーワード 交替制勤務,医療関係者,睡眠習慣,アンケート調香,生活習慣スコア