第60巻第11号 2013年9月 医師数,医療機関数,病床数,患者数のバランスから評価した
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目的 医師不足および医師の偏在は,わが国の医療の大きな課題である。政府は二次医療圏の診療機能の均てん化を目標としてきたが,地域格差はほとんど解消されていない。われわれは人口当たり医師総数で二次医療圏を層別化し,各グループにおける平成8年から22年までの医療資源や業務量の推移を検討した。
方法 「政府統計の総合窓口(e-Stat)」上で提供されている平成8年から22年までの「国勢調査」「医師・歯科医師・薬剤師調査」「医療施設調査」「患者調査」を二次医療圏単位で集計したうえで結合し,時系列データを作成した。同期間に大きな再編のなかった224の二次医療圏を人口当たり医師総数の4分位で4群に分け,平成8年,14年,20年における各種指標の分布を群間比較した。検討した指標は,①医師数/人口比,②病院数/人口比・病床数/人口比,③医師数/病院数比・医師数/病床数比,④患者数/医師数比,⑤患者数/病院数比・患者数/病床数比,⑥手術件数/人口比・手術件数/医師数比である。
結果 医師数/人口比が大きいグループほど人口に比して病院や病床が多く,病院数や病床数に対する医師数も大きかった。最上位グループに人口の47.5%,医師の65.1%が集まっていた。医師数/人口比の格差の大部分が,病院あるいは大学病院の医師数の違いに由来した。すべてのグループで医師数/人口比が経年的に増加したがグループ間格差は解消されず,平成20年における下位グループの医師数/人口比は最上位グループの平成8年時の値に達しなかった。医師が少ない地域では,医師数に対する外来患者数,入院患者数,全身麻酔件数の比が大きく,医師の負担が大きいことが示唆された。最上位グループは他の医療圏からの患者を受け入れて急性期を中心とする医療を提供していた。
結論 二次医療圏レベルでみた医療資源の地域格差は非常に大きく,この格差は過去12年間ほとんど解消されていない。ただし医師が多い地域と少ない地域では提供する医療の内容も異なり,複数の医療圏が機能を補完し合って診療を提供している。医療資源や保健医療財政の限界から考えると,地理的なアクセスの平等性を目指すのではなく,思い切った医療資源の集約や診療のボリュームをコントロールすることを目指すべきである。
キーワード 医師数,二次医療圏,地域格差,医療資源