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第59巻第15号 2012年12月

介護費用と家族介護の評価に関する日韓比較

増田 雅暢(マスダ マサノブ)

目的 日本と韓国において要介護高齢者を抱える家族の介護費用負担額や負担感などを調査することにより,介護保険制度導入後の介護費用の状況を把握するとともに,日韓比較により介護費用負担に関する両国の特徴を分析する。あわせて,介護手当の導入の是非について意識調査を行い,今後の介護者支援の方策について検討する。

方法 本研究は,日韓において在宅で要介護高齢者を介護している家族介護者を対象に,日本では3市,韓国では2市において,留置調査と面接調査を併用して実態調査を行った。

結果 日本では,毎月の介護費用は,月額平均43,800円,介護サービスの利用に伴う毎月の負担額は,月額平均26,100円であった。日本の先行研究では,介護保険導入前の1993年では,月額34,146円,導入直後の2002年では,月額38,928円であった。一方,韓国では,月額平均45.5万ウォン(約3.4万円),介護サービスの自己負担額は,月額平均23.4万ウォン(約1.7万円)であった。介護手当の導入については,日本では54%の人が,韓国では75%の人が賛成した。手当の水準については,日本よりも韓国の方が高い水準を希望している人が多かった。

考察 日韓比較において大きな相違が2点みられた。ひとつは,介護費用の負担者の相違である。日本では全体の3分の2は要介護者本人であるが,韓国では,同居・別居の子どもが全体の3分の2であった。韓国では,国民皆年金の歴史が浅く,高齢者の年金等の所得水準が低いことや,「親孝行」の精神から,子どもが親の介護費用を負担するという考えが一般的であるということが考えられる。もうひとつは,介護サービスの利用に伴う自己負担額の負担感に関する認識の相違である。日本では,負担に感じる人は全体の3分の1であるのに対し,韓国では全体の7割が負担を感じている。韓国では,負担者が介護者である子ども自身であることや,介護保険の自己負担割合が日本よりも高いことによるものと考えられる。介護手当については,ドイツの介護保険では制度化されているが,日本では制度がなく,韓国では小規模の制度が存在しているにすぎない。日韓とも,家族介護者から導入の要望が高いことを考慮すると,今後,介護者支援の観点から制度化に向けて検討を進める必要があると考えられる。

キーワード 介護保険,介護費用負担,家族介護,介護手当

 

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