第61巻第7号 2014年7月 パーキンソン病患者の主介護者における
仲井 達哉(ナカイ タツヤ) 杉山 京(スギヤマ ケイ) 澤田 陽一(サワダ ヨウイチ) |
目的 本研究の目的は,パーキンソン病患者の在宅療養を支える主介護者を対象に,介護負担感と家族機能に対する認知的評価との関連性を明らかにすることである。
方法 調査対象者は,A病院神経内科外来へ通院するパーキンソン病患者の主介護者492名であり,自記式質問紙ならびに診療録からの診療情報の抽出を行った。調査項目は,患者および主介護者の属性に加え,病状やADLなどの心身機能状態,介護環境等の心理社会的状況で構成した。介護負担感の測定にはCare-Giving Burden Scale(CBS-8)を使用した。CBS-8は,「社会的活動の制限の認知」「否定的感情の認知」の2つの側面から介護負担感を評価する尺度である。家族機能認知の測定には,竹本らの家族機能認知尺度を使用した。家族機能認知尺度は,Olsonの理論を参考に,「家族の凝集性」「家族の適応力」「家族のコミュニケーション」の3領域で構成されている尺度である。統計解析には,家族機能認知を独立変数,介護負担感を従属変数とした因果関係モデルを構築し,加えて主介護者の属性や患者の心身機能状態等を介護負担感の背景変数として設定し,構造方程式モデリングを用いてモデルの適合度と各変数間の関連性を検討した。
結果 「家族の凝集性」は,「社会的活動の制限の認知」および「否定的感情の認知」と有意な関連性を示した。「家族の適応力」は,「社会的活動の制限の認知」と有意な関連性を示した。特に,「家族の凝集性」は介護負担感の2因子ともに有意な関連を示した。介護負担感に対する説明率は,「社会的活動の制限の認知」が53.9%,「否定的感情の認知」が38.6%であった。
結論 家族機能の認知的評価において,「家族の凝集性」が低いほど「社会的活動の制限の認知」および「否定的感情の認知」が高く,「家族の適応力」が低いほど「社会的活動の制限の認知」が高いことが明らかとなった。「家族の凝集性」は,「社会的活動の制限の認知」および「否定的感情の認知」の双方と有意な関連が認められており,支援策の検討においては家族成員のつながりに着目した介入視点の重要性が推察される。
キーワード パーキンソン病,主介護者,介護負担感,家族機能認知,構造方程式モデリング