第56巻第11号 2009年10月 年齢・職業不詳の自殺者が都道府県別自殺率に及ぼす影響赤澤 正人(アカザワ マサト) 松本 俊彦(マツモト トシヒコ) 川野 健治(カワノ ケンジ)稲垣 正俊(イナガキ マサトシ) 竹島 正(タケシマ タダシ) |
目的 警察庁発表の自殺の概要資料と厚生労働省の人口動態統計では,毎年自殺者数,自殺率に差が確認される。集計方法の違いが要因のひとつと考えられるが,自殺の概要資料には発見された年以前の自殺がその年の自殺として計上されうる。本研究では,発見された年以前の自殺者であると推測される自殺者を,「年齢不詳」かつ「職業不詳」の自殺者として捉え,年齢・職業不詳の自殺者が都道府県の自殺率に及ぼす影響を検討する。
方法 警察庁から自殺予防総合対策センターに提供を受けた,平成16年から18年の自殺についての自殺統計原票に基づく集計データから,都道府県別に年齢・職業不詳の自殺者数を集計した。そして発見地による自殺者数から年齢・職業不詳の自殺者数を除いた自殺率を求め,発見地による自殺率と比較検討した。
結果 3年間に全国で779人の年齢・職業不詳の自殺者が確認された。年齢・職業不詳の自殺者が多い都道府県は,東京都,山梨県,福岡県,神奈川県,愛知県等であった。山梨県は他県と比較して,発見地による自殺率(41.9,41.8,42.7)と,年齢・職業不詳の自殺者数を除いた自殺率(38.3,36.0,36.4)との間に差があることが分かった。
結論 山梨県では,年齢・職業不詳の自殺者数が自殺の概要資料における自殺率を高めている可能性が示唆された。自殺の実態把握にはデータの特徴や限界を認識しておくことが重要である。
キーワード 自殺,自殺率,自殺の概要資料,人口動態統計,年齢・職業不詳の自殺者