第54巻第4号 2007年4月 基準病床数制度による病床数への影響に関する研究-入院需要量の変化に対する病床数の変化について-溝口 達弘(ミゾグチ タツヒロ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) |
目的 基準病床数制度が,病床数の増減に与えた影響を明らかにし,また,もし仮に,現状で基準病床数制度を廃止した場合に,どの程度病床が増床するのか検討することを目的とした。
方法 対象は,病床の種別にかかわらず病院における全病床および全入院患者とした。病床供給の検討は,入院需要量の変化を考慮した上で行うこととし,入院需要量の変化として,予想される入院患者数の年次推移を推計し用いることとした。推計は昭和59年,昭和62年,平成2年,平成5年,平成8年の5つの時点を基準として行った。推計された5つの入院患者数の年次推移を,それぞれ基準とした時点のモデルと呼ぶこととし,各モデルの比較検討,実際の人口との関連および実際の病床数との比較,基準病床数制度導入前のモデルから求めた平成16年の病床数と実際の病床数との比較を行った。
結果 5つのモデルは,いずれも年々増加する結果となった。平成16年時点において比較すると,多い方から,昭和62年モデル,平成2年モデル,昭和59年モデル,平成5年モデル,平成8年モデルの順であった。いずれのモデルにおいても,総人口との相関が強く,それ以上に65歳以上人口との相関が強かった。65歳未満人口とは負の相関が強かった。基準病床数制度導入前のモデルから算出された病床数と実際の平成16年の病床数との差は,53~62万床であった。
結論 必要病床数制度が制定されて以降現在に至るまで,入院需要は高齢化による影響で常に増加傾向にあり,介入等何らかの要因がない限り,病床数も増加しようとする傾向があったと考えられた。必要病床数制度導入以降,予想される入院需要の増加を上回る病床数の増加が一時的にあったものの,平成5年以降は,入院需要の増加に対して病床数は減少し,昭和59年時点と比べて限定された入院需要にしか対応できていないことが示唆された。また,基準病床数制度を撤廃すると,平成16年現在で,約50万床以上増床する可能性があることが示唆された。
キーワード 医療計画,病床規制,基準病床数,必要病床数,入院需要