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第60巻第12号 2013年10月

高齢知的障害者の死亡原因と疾患状況

-国立のぞみの園利用者の診療記録から-
相馬 大祐(ソウマ ダイスケ) 五味 洋一(ゴミ ヨウイチ) 志賀 利一(シガ トシカズ)
村岡 美幸(ムラオカ ミユキ) 大村 美保(オオムラ ミホ ) 井沢 邦英(イザワ クニヒデ)

目的 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(以下,国立のぞみの園)入所者の罹患の状況と死亡原因に関するデータを整理し,知的障害者の健康管理と医療・介護を考える上での基礎的資料を得ることを目的とした。

方法 国立のぞみの園の過去の診療記録から,入所者の死亡原因および既往歴に関する情報を収集し,集計・分析した。調査対象は,1971年4月から2011年3月の間に死亡した162人とした。病名はICD10国際疾病分類第10版ならびに植田の文献を参考に分類した。

結果 2000年度以前に亡くなった利用者は90人であり,死亡時の平均年齢は41.6歳であった。一方,2001年度から2010年度に亡くなった利用者は72人で,死亡時の平均年齢は59.7歳であった。この結果から,高齢知的障害者に関する死亡原因や疾病については,2001年度から2010年度の間に亡くなった者を対象に,より詳細に分析することが有効と判断した。2001年度以降とそれ以前の死亡原因を比較すると,呼吸器系疾患で死亡した人の割合が全体の43.1%にのぼり,大幅に増加していた。次に,72人の利用者が罹患して最初に診断を受けた年代を疾患別に整理した。その結果,疾患ごとに最初に診断を受けた年代の傾向は異なり,4つに疾患を分類することができ,50歳代で初発となる疾患が多い傾向にあった。

結論 本研究の結果,障害者支援施設で生活する高齢知的障害者の死亡原因としては,新生物や脳血管疾患の割合が比較的低く,呼吸器系疾患で死亡する割合が高いことがわかった。そのため,国立のぞみの園では嚥下機能の低下による肺炎のリスクの備えとして,特別食導入等の食事の工夫や口腔機能の向上・維持を目的とする摂食・嚥下訓練等を実施している。また,罹患状況の分析の結果,30歳代以降の身体状況の変化に注視するとともに,50歳代での多様な疾病の罹患に備える必要性がうかがえた。そのため,身体機能等の変化のない30歳代以前の身体機能,認知機能等をベースラインとして記録するとともに,30歳代以降はそれらの情報を定期的に記録しておく必要性があるといえる。グループホーム・ケアホームは職員数が少なく,非正規職員の世話人が多い傾向にあり,通院の介助や医療機関との連携についても対応に苦慮する実態が指摘されている。上記の取り組みの他,障害福祉分野に限らず,高齢福祉,医療分野の専門職を交えた検討が必要といえる。

キーワード 高齢知的障害者,死亡原因,罹患状況

 

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