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論文記事:介護分野におけるインシデント・アクシデント・レベルの概念設計と検証 201205-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第59巻第5号 2012年5月

介護分野におけるインシデント・アクシデント・
レベルの概念設計と検証

柿沼 倫弘(カキヌマ トモヒロ) 関田 康慶(セキタ ヤスヨシ) 柿沼 利弘(カキヌマ トシヒロ)

目的 介護分野の安全管理の基本情報となるインシデント・アクシデントの定義の現状を明らかにするとともに,インシデント・アクシデント・レベル概念を定義し,その妥当性を検証する。

方法 介護分野,医療分野の関連文献等のインシデント・アクシデントに関する定義やレベルを参考に,筆者らの議論に基づいたレベル概念を設計した。その妥当性を検証するために,北海道・東北地方の介護老人福祉施設906施設と介護老人保健施設537施設を対象にWEBアンケート調査(筆者らの研究グループが開発)を実施した。本調査では,筆者らが提示したインシデント・アクシデント・レベル概念の妥当性を検証した。施設長が想定しているレベルとの類似性を妥当性の指標とした。また,報告事例を用いたレベルと報告内容のあり方等について検証した。具体的な事例を3つ挙げ,レベル概念の設計指針充足度に応じてレベルの分類を求めた。事例1と事例2は,筆者らの作成したレベルの設計指針を満たし,事例3は十分に満たさないものとした。レベル分類比較では,両施設が同じ分類を行っているか否かについて5%の有意水準でχ2検定を試みた。

結果 WEBアンケート調査回収率は,11.2%(162施設)であった。インシデント・アクシデント・レベルを設定する施設のうち,約9割の施設が筆者らの提示したレベル概念と類似していることが判明した。レベル分類では,事例1で約8割,事例2で約9割とほぼ想定どおりの分類がみられたが,事例3では分類の判断が大幅に分かれた。施設間のレベル分類比較でのχ2検定の結果,経過観察が必要になった場合に介護老人福祉施設のほうが有意に介護老人保健施設より重症に捉える傾向がみられた。

結論 介護分野のインシデント・アクシデントの定義は数多くあるが,統一された定義のないことが判明した。筆者らの提示したレベル概念の定義は,多くの施設と類似していたので,受け入れられる可能性が高い。レベル概念の定義には,利用者の状態や経過事実等を含め,報告内容と対応していることが重要である。レベルの分類では,経過観察を行った場合のレベル分類に有意な差がみられたので,施設種別ごとにレベルの分類が異なる場合があることに注意する必要がある。しかし,インシデント・アクシデント・レベルは,報告内容を対応させることで全体的に高い分類力がみられるので,ある程度標準化できる可能性が示唆された。

キーワード インシデント・アクシデント・レベル,レベル分類,標準化,情報共有,予防

 

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