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第61巻第2号 2014年2月 WHO-DAS2.0日本語版の開発とその臨床的妥当性の検討筒井 孝子(ツツイ タカコ) |
目的 WHO-DAS2.0(WHO Disability Assessment Schedule2.0)は,障害の評価を行うためにICFコードを用いた計測ツールとは異なる視点から開発された。この評価尺度が日本語化され,利用できるようになればICFの概念に基づいた生物心理社会学的モデルを基礎とした,いわゆる障害の程度を評価できる可能性を高めることができる。また,この評価尺度を用いた得点は国際比較も可能とすることから,日本における社会福祉関連制度を国際的な観点から評価する際の資料としても重要となると考えられる。本研究では言語学的観点からWHO-DAS2.0の評価票を訳出し,専門家によるレビューおよびフィールド調査を踏まえて臨床的な観点からその妥当性を検討することを目的とした。
方法 WHO-DAS 2.0の各種評価票およびマニュアルを言語学的な観点から日本語訳を行った。その後,これらの調査票について,医師,看護師をはじめとした保健医療・社会福祉関係の専門家,障害の当事者の意見を聴き,実態に合わせて修正した。次にヒアリング調査結果を踏まえて修正された調査票を使用したフィールド調査を実施し,その臨床的妥当性を検証した。
結果 言語的に忠実に訳した調査票は保健医療・社会福祉関係専門家,障害当事者の意見を収集した結果,表現の修正が必要とされた。この指摘に基づいて修正された調査票を用いて自己記入版と面接者記入版のフィールド調査を行い,評価結果の比較をした。その結果,全調査対象者の自己記入版と面接者記入版の回答結果が一致した項目はなかった。
結論 今後,WHO-DAS2.0を日本において実用可能なものにするためには,臨床的観点からの障害福祉,医療,保健,介護分野の学識者や専門家によるレビューや言語学観点からの原語の意味を踏まえつつ,日本文化に適応した修正をさらに重ねていく必要があると考えられた。同時に,これを臨床現場においてアセスメントツールとして活用していくためには,障害特性に応じた調査票の工夫や評価のためのガイドライン作成が必須と考えられた。
キーワード WHO-DAS2.0,ICF,WHO,生物心理社会学的モデル,評価